バルビツレイト療法中に高ミオグロビン血症およびDICを発症した一例

重症頭部外傷では頭蓋内圧亢進の抑制に種々の薬剤が使用されバルビツレイト剤もそのひとつである. 今回われわれは交通外傷による頭部外傷と下肢骨折を合併した症例にバルビツレイト療法を施行しその経過中, 高ミオグロビン血症およびDICを発症した症例を経験したので報告した. 症例は19歳, 女性. 平成4年3月30日, バイクで走行中, 車と衝突. 来院時, 意識レベルIII-100, 血圧110/60mmHg, 脈拍120/分, 右耳より出血を認めた. 諸検査にて頭蓋骨骨折, 脳挫傷, 外傷性くも膜下出血, 硬膜外出血および脛骨骨折と診断. 全身管理目的でICU入室となった. ICU入室後, 頭蓋内圧...

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Published in蘇生 Vol. 11; pp. 92 - 93
Main Authors 溝渕知司, 高橋修治, 北浦道夫, 片山浩, 荻原浩太郎, 筒井功, 菅健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1993
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ISSN0288-4348

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Summary:重症頭部外傷では頭蓋内圧亢進の抑制に種々の薬剤が使用されバルビツレイト剤もそのひとつである. 今回われわれは交通外傷による頭部外傷と下肢骨折を合併した症例にバルビツレイト療法を施行しその経過中, 高ミオグロビン血症およびDICを発症した症例を経験したので報告した. 症例は19歳, 女性. 平成4年3月30日, バイクで走行中, 車と衝突. 来院時, 意識レベルIII-100, 血圧110/60mmHg, 脈拍120/分, 右耳より出血を認めた. 諸検査にて頭蓋骨骨折, 脳挫傷, 外傷性くも膜下出血, 硬膜外出血および脛骨骨折と診断. 全身管理目的でICU入室となった. ICU入室後, 頭蓋内圧(ICP)モニターを挿入. 人工呼吸管理としてステロイド, 浸透圧利尿剤などを投与し更にサイオペンタールによるバルビツレイト療法を開始した. 脳浮腫の評価は継続的なICP測定と経日的なCT所見を参考とし脳波所見も加見しサイオペンタールの投与量を適宜調節した. 入室4日目サイオペンタールの過量による一時的な平坦脳波がみられた以外, 呼吸循環系に著変なく, ICPは40mmHg前後にて経過した. 入室7日目頃よりICPが20~30mmHgと安定しCP所見にても改善傾向がみられたため入室9日目にサイオペンタールの投与を中止した. しかし同時期よりPa_O2 が急激に低下するとともに尿量も減少. 更にCPK2145U/リットル, 血中ミオグロビン16810ng/mlと異常高値を示した. このため肺塞栓を疑いウロキナーゼ投与, 血液浄化法など施行するも効果なく11日目に不幸な転帰をとった. 病理解剖にて肺などの多数のフィブリン血栓と全身血管への骨髄細胞の流出を認めた. 本症例では同一肢位および筋圧迫などによる高Mb血症のみとは考えにくく, バルビツレイト剤の過量投与が一因をなしていたと考えられた.
ISSN:0288-4348