術野でのフィブリン糊使用に起因する術中アナフィラキシーの臨床経験
手術中に発生するアナフィラキシーショックは, 静注によって投与された麻酔関連薬剤に起因することが多いが, 今回, 術野で使用されたフィブリン糊製剤によって発生したと思われるアナフィラキシーショックの症例を経験した. 症例は, 60歳男性で, 肺癌に対して2度目の肺葉切除術が施行された. 特記すべきアレルギー歴等はなかった. 麻酔は硬膜外麻酔併用の全身麻酔とし, 分離肺換気を行なった. 手術開始後, 肺葉摘出までは, 血圧120/70mmHg程度で安定していた. 肺葉摘出後, 術野にてフイブリン糊(ベリプラスト(R))を使用した. その5分後, 収縮期血圧が40mmHgまで急激に低下した. 術操...
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Published in | 蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 186 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
10.10.2003
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 手術中に発生するアナフィラキシーショックは, 静注によって投与された麻酔関連薬剤に起因することが多いが, 今回, 術野で使用されたフィブリン糊製剤によって発生したと思われるアナフィラキシーショックの症例を経験した. 症例は, 60歳男性で, 肺癌に対して2度目の肺葉切除術が施行された. 特記すべきアレルギー歴等はなかった. 麻酔は硬膜外麻酔併用の全身麻酔とし, 分離肺換気を行なった. 手術開始後, 肺葉摘出までは, 血圧120/70mmHg程度で安定していた. 肺葉摘出後, 術野にてフイブリン糊(ベリプラスト(R))を使用した. その5分後, 収縮期血圧が40mmHgまで急激に低下した. 術操作を中止すると同時に, 麻酔薬の投与を中止し, 100%酸素による両肺換気を開始した. さらにドパミンを10μg/kg/minで投与開始したが, 収縮期血圧は40~50mmHgであった. 上肢や上胸部の皮膚が紅潮していたことから, アナフィラキシーショックと診断した. エピネフリン0.1mgを2回静注したところ, 収縮期血圧は120mmHg程度まで回復した. その後, ドパミンを中止し, エピネフリンを0.2μg/kg/minで持続投与開始, さらにメチルプレドニゾロン1000mgを投与した. 循環動態が安定したため術操作を再開した. 約1時間で術操作を終了した. 手術終了後, エピネフリンの持続投与を中止しても血圧低下は認められず, 覚醒も良好であったため抜管した. 意識は清明であり, 特記すべき神経症状等はみられなかった. アナフィラキシー発生直前に麻酔科側より使用した薬剤はないことから, 術野で使用したフイブリン糊が原因であると考えられた. |
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ISSN: | 0288-4348 |