バルビツレート療法施行時の血中カリウム濃度の変動について

バルビツレートが血清カリウム(K)低下作用を有することは知られており, 麻酔導入時のK低下作用については幾つかの報告もあるが, バルビツレート長期投与時のKの変動についての報告は少ない. そこでわれわれはバルビツレート長期持続投与時の血清K濃度の変動に着目し, この動きを経時的に測定したので若干の文献的考察を加えて報告する. <対象および方法>対象は当施設ICUに入院中の脳動脈瘤ネッククリッピング術施行後の症例1例, ヘルペス性脳炎の症例2例, 脳腫瘍摘出術施行後の症例2例の計5例であり, おのおのの症例に脳圧の低下を目的としてサイアミラールナトリウムを開始量3~5mg/kg/hに...

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Published in蘇生 Vol. 9; p. 74
Main Authors 出頭裕元, 和気陽一郎, 土舘良一, 白石修史, 畑山聖, 石井脩大, 三宅有
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1991
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ISSN0288-4348

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Summary:バルビツレートが血清カリウム(K)低下作用を有することは知られており, 麻酔導入時のK低下作用については幾つかの報告もあるが, バルビツレート長期投与時のKの変動についての報告は少ない. そこでわれわれはバルビツレート長期持続投与時の血清K濃度の変動に着目し, この動きを経時的に測定したので若干の文献的考察を加えて報告する. <対象および方法>対象は当施設ICUに入院中の脳動脈瘤ネッククリッピング術施行後の症例1例, ヘルペス性脳炎の症例2例, 脳腫瘍摘出術施行後の症例2例の計5例であり, おのおのの症例に脳圧の低下を目的としてサイアミラールナトリウムを開始量3~5mg/kg/hにて持続投与し, 適時漸減していき, その間の血清中, 尿中K濃度を測定した. 投与期間は4~8日間であり, 全症例とも肝, 腎機能, 耐糖能には問題がなかった. <結果および結語>バルビツレート療法施行期間は4~8日間であったが, すべての症例において血清K濃度は投与後1日~2日にて最低となり, 投与量を漸減または中止すると血清K濃度はK free輸液を用いたり, G-I療法を併用したりしたにもかかわらず上昇傾向を示した. この間に一時的に低, あるいは高K血症となった症例もあるが, 心電図上, 多少のT波の変化は認めたが, 重篤な臨床症状は認めなかった. このようにバルビツレート療法施行の際には, 血清カリウム濃度の変動が生じ得るので, その使用に当たっては頻回な血清カリウム濃度の測定が必要であり, 低および高カリウム血症が生じることを念頭に置いた注意深い輸液管理と, 必要に応じた血清カリウム濃度の補正が大切であると思われる.
ISSN:0288-4348