By-standerによる圧すだけの心肺蘇生は有効か?

近年, 未来における心肺蘇生法として, 「圧すだけの蘇生」が注目されている. いくつかの動物実験においても, 気道を確保しF_I O_2 1.0の酸素投与下で人工呼吸を行わない蘇生法が, 従来の蘇生法と同等の効果があるとの報告がある. 今回, ラットを用いroom air下に心停止モデルを作成し, 圧すだけの蘇生を行いその効果について検討した. 〔方法〕対象はSD系ラットで, 自発呼吸下にハロセン麻酔を行い, 動脈ライン, 中心静脈ラインを確保した. 心停止はケタミン100mg/kg静注によって作成した. 心停止後4分間無治療とし, その後動脈圧を30mmHgになるように, 1分間100~12...

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Published in蘇生 Vol. 16; no. 3; p. 225
Main Authors 川前金幸, 池上之浩, 島田二郎, 松本幸夫, 大槻学, 田勢長一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1997
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ISSN0288-4348

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Summary:近年, 未来における心肺蘇生法として, 「圧すだけの蘇生」が注目されている. いくつかの動物実験においても, 気道を確保しF_I O_2 1.0の酸素投与下で人工呼吸を行わない蘇生法が, 従来の蘇生法と同等の効果があるとの報告がある. 今回, ラットを用いroom air下に心停止モデルを作成し, 圧すだけの蘇生を行いその効果について検討した. 〔方法〕対象はSD系ラットで, 自発呼吸下にハロセン麻酔を行い, 動脈ライン, 中心静脈ラインを確保した. 心停止はケタミン100mg/kg静注によって作成した. 心停止後4分間無治療とし, その後動脈圧を30mmHgになるように, 1分間100~120回で心マッサージを行った. ラットは, 仰臥位で, 気道確保しないでroom airのみのA群, 気切により気道確保し, room airのB群, 気切とF_I O_2 1.0のC群, 気切してF_I O_2 1.0で人工呼吸したD群の4つに分類した. 測定は心停止前, 心マッサージ直前, および直後から5分おきに20分間行った. 測定項目は動静脈血ガス分析, 摘出肺のWet/Dry ratioである. 〔結果〕ケタミンによる心停止後は, 喘ぎ呼吸はなかった. A群, B群, C群共に肺水腫となり, A, B群で著明であった. PaO_2 , PaCO_2 も同様な傾向であった. Wet/Dry ratioはA群≧B群≧C群>D群の順に大きかった. 〔考察〕本モデルではラットの胸郭recoilが小さく, 吸気量が不十分などの問題点があり, 単純にヒトに当てはめることはできない. また, 喘ぎ呼吸がなかった影響もあるかもしれない. しかし, 気切による確実な気道確保や純酸素投与によっても肺水腫を呈しており, 圧すだけの蘇生の効果は疑問視された. また, 実際のBy-standerによる蘇生では, 必ずしもO_2 を投与できず, また器具による気道確保も不可能な場合が多い. このような状況下においても, 圧すだけの蘇生が従来の方法同様の有効性がなければ一般的には普及しえないと考える. 〔結語〕今回の実験からは, 圧すだけの蘇生の有効性は見いだせなかった.
ISSN:0288-4348