人免疫グロブリン製剤投与後に梅毒抗体の著増がみられた症例
骨髄移植では, 多くの血液製剤が使用されるため, その感染リスクに対し移植後に感染の有無を確認する検査が行われている. 今回, 当院で2歳の小児が骨髄移植後の退院時検査で梅毒抗体の陽性が判明したのを発端に, 感染の有無と血液製剤の使用履歴と抗体価の変動について調査を行った. 「症例」 2歳のAML患者に同種骨髄移植治療が行われた. 移植前より血小板及びMAP製剤を頻回に輸血, 加えて移植前日からは, 人免疫グロブリン製剤を週に1度の割合で投与された. 入院時より移植後骨髄機能が回復するまでの間にグロブリン製剤は18回使用された. 「結果」 入院時からの患者の保管血清をすべて検査したところ, 梅...
Saved in:
Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 266 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.2001
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
Cover
Summary: | 骨髄移植では, 多くの血液製剤が使用されるため, その感染リスクに対し移植後に感染の有無を確認する検査が行われている. 今回, 当院で2歳の小児が骨髄移植後の退院時検査で梅毒抗体の陽性が判明したのを発端に, 感染の有無と血液製剤の使用履歴と抗体価の変動について調査を行った. 「症例」 2歳のAML患者に同種骨髄移植治療が行われた. 移植前より血小板及びMAP製剤を頻回に輸血, 加えて移植前日からは, 人免疫グロブリン製剤を週に1度の割合で投与された. 入院時より移植後骨髄機能が回復するまでの間にグロブリン製剤は18回使用された. 「結果」 入院時からの患者の保管血清をすべて検査したところ, 梅毒抗体検査では入院時では2.00mIU/mlと陰性であったが, グロブリン製剤使用後2日目で7.37mIU/ml, 1週間後の2回目使用後には20.02mIU/mlと上昇し, 移植3ヶ月後には33.0mIU/mlと増加がみられ, FTA-ABS法でも陽性反応が示された. グロブリン製剤投与中止後40日の経過で抗体は, 7.0mIU/mlに低下した. また, HBs抗体についても, 3.9mIU/mlから93.0mIU/mlの範囲で増減がみられた. 使用された同一のグロブリン製剤の梅毒抗体とHBs抗体を測定したところ, それぞれ186.05mIU/ml, 770.44mIU/mlであった. さらに輸血された血小板製剤の中にもHBs抗体価がPHA法で400mIU/mlと高値を示すものも見つかった. 梅毒抗原の確認については, 移植後3ヶ月の患者血清および, 使用したグロブリン製剤と同一ロットを含む複数のロットについてPCR試験を行い梅毒抗原の陰性を確認した. |
---|---|
ISSN: | 0546-1448 |