右冠動脈起始部病変にステントを挿入し, 救命し得たウェルナー症候群の1症例

症例は57歳男性. 39歳時にウェルナー症候群と診断され外来通院していた. 3ヵ月前より労作時に胸部絞扼感を自覚, 頻回となり, 不安定狭心症と診断され緊急入院した. 安静と薬物療法にて自他覚症候は改善した. 入院後, CPKと白血球の上昇を認め, 非Q波心筋梗塞と考えられた. 発症7日目の冠動脈造影では, 右冠動脈起始部に石灰化を伴う90%の狭窄を認めた. 発症12日目に, 再び狭心症発作出現, V_4~6 のST低下と徐脈, ショック状態となり, 右冠動脈起始部病変に対し緊急ステント挿入術を施行した. 狭窄部の良好な拡張が得られ, 胸痛, 不整脈は消失した. 術後はワーファリンによる抗凝固...

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Published in心臓 Vol. 29; no. 9; pp. 764 - 769
Main Authors 五十嵐美穂子, 椎名豊, 森本浩司, 五十嵐宗喜, 青木直人, 阿部純久, 田川隆介, 友田春夫, 半田俊之介, 田辺享史, 神出毅一郎, 堺秀人, 松尾聿朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.09.1997
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ISSN0586-4488

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Summary:症例は57歳男性. 39歳時にウェルナー症候群と診断され外来通院していた. 3ヵ月前より労作時に胸部絞扼感を自覚, 頻回となり, 不安定狭心症と診断され緊急入院した. 安静と薬物療法にて自他覚症候は改善した. 入院後, CPKと白血球の上昇を認め, 非Q波心筋梗塞と考えられた. 発症7日目の冠動脈造影では, 右冠動脈起始部に石灰化を伴う90%の狭窄を認めた. 発症12日目に, 再び狭心症発作出現, V_4~6 のST低下と徐脈, ショック状態となり, 右冠動脈起始部病変に対し緊急ステント挿入術を施行した. 狭窄部の良好な拡張が得られ, 胸痛, 不整脈は消失した. 術後はワーファリンによる抗凝固療法を行い, 6ヵ月後の冠動脈造影でも50%の残存狭窄を認めるが, 経過は良好である. ウェルナー症候群は早老症の代表的な疾患で, その主な死因は動脈硬化に基づく合併症である. 今回我々は重度の冠動脈起始部病変にステントを挿入し, 救命し得たウェルナー症候群の1例を経験した. 文献上ウェルナー症候群に対して冠動脈バイパス術を行った症例は数例にすぎない. さらに, 我々の調べ得た限りでは冠動脈狭窄に対しステント治療を行った症例はなく, 治療手段の選択について興味ある症例と考え報告した.
ISSN:0586-4488