下顎骨に生じたCemento-ossifying fibromaの2例

Cemento-ossifying fibromaは近年WHO分類によって骨原性腫瘍に分類され, 線維性組織の中にセメント質と骨を形成する病変として識別されている. 本病変は多彩のX線所見を呈する線維性骨病変の範躊に入るため, 鑑別診断には十分な配慮が必要であると考える. 今回の症例は, X線学的に典型的と言えるのか否かは別として, 下顎骨にみられた2症例を経験したので報告した. 症例1 患者は34歳の女性で平成10年3月11日に左側下顎部の透過像の精査という主訴で来院した. 現病歴として約5~6年前より左側下顎臼歯部の膨隆に気づいていたが無痛性のため放置していた. 最近になって同部に咬合時に...

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Published in歯科放射線 Vol. 40; no. 3; p. 219
Main Authors 荒木正夫, 橋本光二, 本田雅彦, 寺門正昭, 篠田宏司, 小宮山一雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.09.2000
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Summary:Cemento-ossifying fibromaは近年WHO分類によって骨原性腫瘍に分類され, 線維性組織の中にセメント質と骨を形成する病変として識別されている. 本病変は多彩のX線所見を呈する線維性骨病変の範躊に入るため, 鑑別診断には十分な配慮が必要であると考える. 今回の症例は, X線学的に典型的と言えるのか否かは別として, 下顎骨にみられた2症例を経験したので報告した. 症例1 患者は34歳の女性で平成10年3月11日に左側下顎部の透過像の精査という主訴で来院した. 現病歴として約5~6年前より左側下顎臼歯部の膨隆に気づいていたが無痛性のため放置していた. 最近になって同部に咬合時に違和感を生じるようになったため, 近歯科医を受診したところ, X線検査にて鶏卵大の透過像がみられたため, 精査のために本大学歯科病院に紹介された. 既往歴や家族歴に特記すべき事項はなかった. 初診時のパノラマX線像では, 左側下顎第1小臼歯から第2大臼歯部にかけて比較的境界明瞭な辺縁スムーズな透過像がみられ, 内部は下顎第1大臼歯根尖と接して不均一な小豆大の不透過像がみられた. 下顎下縁皮質骨も著明に膨隆を認めた. 隣接する歯の傾斜や変位はなく, 下顎管の走行は不明瞭であった. 口内法X線像では, 下顎第2小臼歯と第2大臼歯にわずかな歯根の吸収がみられ, 第1大臼歯近心根には一層の透過像を介して不均一な石灰化物が隣接してみられた. 咬合法像では頬舌的な皮質骨の膨隆がみられた. CT像では舌側の皮質骨は菲薄化し膨隆がみられ内部はlow-densityを呈し, 同一断面の軟組織モードでは内部は全体的に筋肉のCT値より高くhigh-densityを呈する部分が混在してみられた. 以上のX線学的所見からはCemento-ossifying fibromaが考えられた. 生検にてCemento-ossifying fibromaと診断されたため, 腫瘍摘出術が施行された. 症例2 患者は32歳の女性で平成11年4月14日に左側下顎小臼歯部に透過像の精査を主訴に来院した. 現病歴としてこれまでに同部に自覚症状や疼痛がなく, 来院2ヶ月前に近歯科医にてパノラマ撮影にて左側下顎小臼歯部に透過像がみられたため, 左側下顎第1大臼歯の抜歯とその1ヶ月後に左側下顎第1, 2小臼歯の抜髄処置が行われたが, 変化がなかったので精査, 加療を目的で本大学歯科病院を紹介された. 既往歴や家族歴に特記すべき事項はなかった. 初診時のパノラマ像では, 境界明瞭で辺縁が不整である一層の骨硬化帯により囲まれる類円形の透過像を認め, 内部は一見すりガラス様構造を呈し下顎管は下方への変位が認められた. 口内法X線像では, 隣接する歯の歯根の吸収などはなかった. 咬合法像では頬舌的皮質骨は非薄化し膨隆がみられた. CT像では内部は不均一な部分を示すhigh-densityな像としてみられた. X線学的にはCemento-ossifying fibromaと考えられた. 生検にてCemento-ossifying fibromaと診断されたため, 腫瘍摘出術が施行された. Cemento-ossifying fibromaは線維性骨病変の1つであり, X線像で内部の石灰化が確認できればX線学的には比較的鑑別しやすい部類の病変であるが, 初期におけるものは必ずしも本疾患を決定するX線所見はみられず, むしろ他の歯原性嚢胞や腫瘍との鑑別が必要となることを経験する. 今回経験した2症例は比較的X線学的鑑別手段は容易であったが, とくに症例1での内部構造に関してはplainのX線写真で鑑別診断の手がかりとなる石灰化状態が判断しにくかったが, 軟組織モードのCT像では病変内の骨形成状態が詳細に表されており, 今回の診断には有効な手段であった.
ISSN:0389-9705