失語症者の聴覚的単語処理におけるプロソディプライミングの影響
【目的】プライミングとは, 先行刺激(プライム刺激)の受容が後続刺激(ターゲット刺激)の処理に影響を及ぼす現象である. 本研究では, プロソディを関連させたプライム呈示が失語症者の聴覚的単語処理を促進する, という仮説を立て検証した. 【方法】対象は, 失語症者43名である. プライム, ターゲット間のプロソディ関係(関連条件, 無関連条件)を変数に設定し, 刺激音を100組作成した. プロソディ関連条件ではターゲットを正しいアクセント型で発音した音声の低周波域音を, プロソディ無関連条件ではターゲットを正しくないアクセント型で発音した音声の低周波域音を, それぞれのプライムとした. 被験者に...
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Published in | コミュニケーション障害学 Vol. 21; no. 3; p. 206 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本コミュニケーション障害学会
30.12.2004
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ISSN | 1347-8451 |
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Summary: | 【目的】プライミングとは, 先行刺激(プライム刺激)の受容が後続刺激(ターゲット刺激)の処理に影響を及ぼす現象である. 本研究では, プロソディを関連させたプライム呈示が失語症者の聴覚的単語処理を促進する, という仮説を立て検証した. 【方法】対象は, 失語症者43名である. プライム, ターゲット間のプロソディ関係(関連条件, 無関連条件)を変数に設定し, 刺激音を100組作成した. プロソディ関連条件ではターゲットを正しいアクセント型で発音した音声の低周波域音を, プロソディ無関連条件ではターゲットを正しくないアクセント型で発音した音声の低周波域音を, それぞれのプライムとした. 被験者には, ターゲット刺激が有意味語か無意味語かの判断を求める語彙性判断課題を実施した. 被験者ごとに各試行の反応時間(RT)を測定した. 【結果】関連条件の平均RTは無関連条件の平均RTより若干短かったが, 統計的に有意な差ではなかった. さらに, 無関連条件の平均RTから関連条件の平均RTを引いた値(RT差)の分析を行った. RT差の値は, 先行刺激による反応時間の短縮を表し, 「プライミング効果の程度」だと考える. 被験者を重症度(重度, 中等度, 軽度)で分類したところ, RT差に有意差がみられ重度, 軽度, 中等度の順にプライミング効果の程度が増大した. また, 失語タイプ(流暢, 非流暢)別の分析では, 流暢性失語群に関連条件による反応時間の短縮がみられた. 統計的に有意な差ではないが, 流暢性失語症者は非流暢性失語症者に比べてプライミング効果の程度が大きいことが示された. 【考察】失語症軽度群に比べ中等度群に, より促進効果があったことは, プロソディを関連させた先行刺激呈示が失語症者の聴覚的単語処理に影響することを示唆する. 流暢性失語症者には言語訓練上, プロソディ活用を工夫できるであろう. |
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ISSN: | 1347-8451 |