凝固因子に対するinhibitor

血友病患者の出血症状に対して第Vlll因子・第IX因子濃縮製剤は不可欠なものである. 近年, AIDSが社会的問題となり加熱製剤が開発されたが, 抗血友病製剤の加熱処理によりinhibitor発生の増加が懸念されている. 血友病患者のinhibitorの発生は文献的には5~10%とされているが, その発生が補充療法を困難にし, 関節の変形など臨床症状の悪化を来す事が多い. 我々は, inhibitorを有する血友病A患者の経過を観察している. 症例は40歳の男性である. 小児期より膝関節出血を繰り返している. 34歳時に尿節結石にて結石摘出術を施行した際, 血友病Aの確定診断がなされ, 第Vl...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 34; no. 1; p. 95
Main Authors 津田雅之, 鈴木彦次, 森美貴, 出口晃, 大久保伊都子, 和田英夫, 出口克巳, 白川茂, 南信行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1988
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ISSN0546-1448

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Summary:血友病患者の出血症状に対して第Vlll因子・第IX因子濃縮製剤は不可欠なものである. 近年, AIDSが社会的問題となり加熱製剤が開発されたが, 抗血友病製剤の加熱処理によりinhibitor発生の増加が懸念されている. 血友病患者のinhibitorの発生は文献的には5~10%とされているが, その発生が補充療法を困難にし, 関節の変形など臨床症状の悪化を来す事が多い. 我々は, inhibitorを有する血友病A患者の経過を観察している. 症例は40歳の男性である. 小児期より膝関節出血を繰り返している. 34歳時に尿節結石にて結石摘出術を施行した際, 血友病Aの確定診断がなされ, 第Vlll因子製剤輸注が行われた. その後, 関節内出血のため, 同製剤の輸注が時々行われていた. その約2年後, inhibitorの発生を認めたため, 免疫抑制剤投与・第Vlll因子製剤大量輸注を試みたところ, やや止血効果は見られたがinhibitorの力価の変化は見られていない. このinhibitor症例に関し, 文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0546-1448