本院における輸血後肝炎の現状

はじめに 輸血後肝炎は, GPT, HBs抗原などの, スクリーニングに伴い, 激減が期待されたが, 今日でもなお10~20%の発生率が報告されている. 今回我々は, 当院における輸血後肝炎の発生状況を調査し, 臨床経過, 予後などについて, 検討を加えたので報告する. 方法 調査対象は, 1983年4月から, 1984年3月までに当院にて輸血を受けた. 心臓血管外科72例, 産婦人科40例, 外科108例, 内科277例計497例で, うち男子281例, 女子316例, 年齢は1歳から89歳にわたった. 輸血用血液は, 新鮮血, 保存血, 新鮮凍結人血漿, 濃厚赤血球が大部分であり, 新鮮洗...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 32; no. 1; pp. 103 - 104
Main Authors 上田倫子, 上田恭典, 矢切良穂, 三宅康夫, 山田紀子, 池田泰雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1986
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ISSN0546-1448

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Summary:はじめに 輸血後肝炎は, GPT, HBs抗原などの, スクリーニングに伴い, 激減が期待されたが, 今日でもなお10~20%の発生率が報告されている. 今回我々は, 当院における輸血後肝炎の発生状況を調査し, 臨床経過, 予後などについて, 検討を加えたので報告する. 方法 調査対象は, 1983年4月から, 1984年3月までに当院にて輸血を受けた. 心臓血管外科72例, 産婦人科40例, 外科108例, 内科277例計497例で, うち男子281例, 女子316例, 年齢は1歳から89歳にわたった. 輸血用血液は, 新鮮血, 保存血, 新鮮凍結人血漿, 濃厚赤血球が大部分であり, 新鮮洗浄赤血球, 白血球除去赤血球, 解凍赤血球及び, 血小板, 顆粒球の成分輸注等が少数であるが見られた. HBs-抗原のスクリーニングはRPHA法により, 観察期間は6ヵ月以上とした. 基礎疾患として肝機能障害のあるもの, 薬剤性肝障害の可能性のあるもの, 術後肝障害の可能性のあるもの, follow upが十分なされていないものは, 集計から除外した. 診断は吉利班の輸血後肝炎診断基準に準じた. すなわち輸血後3週以降にGPT値50単位以上の上昇が連続して2週以上認められたものを肝炎の疑いとし, 前記症例で100単位以上の上昇が2週間以上認められたものを確診とした.
ISSN:0546-1448