抗DIgG投与にもかかわらず抗D産生をみた1例
抗D免疫グロブリン(抗DIgG)は, Rh陰性妊婦に投与することにより, 次回のRh不適合妊娠をほぼ100%阻止出来るといわれている. 当熊大病院産科において1980年から1987年11月までに109例の抗DIgG投与後次回の妊娠について効果を判定し1例のみ分娩直前に抗D産生をみたのでこの症例について検討した. 患者は27歳主婦, 0, ccddee輸血歴はない. 妊娠歴は第1回1983年3ヵ月で人工流産, 第2回1984年10ヵ月で男児, 第3回1986年10ヵ月で男児, 第4回1986年3ヵ月で自然流産. 新生児溶血性疾患は第2回, 第3回ともない. 4回のすべてに抗DIgG投与が行われて...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 34; no. 3; pp. 377 - 378 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.06.1988
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 抗D免疫グロブリン(抗DIgG)は, Rh陰性妊婦に投与することにより, 次回のRh不適合妊娠をほぼ100%阻止出来るといわれている. 当熊大病院産科において1980年から1987年11月までに109例の抗DIgG投与後次回の妊娠について効果を判定し1例のみ分娩直前に抗D産生をみたのでこの症例について検討した. 患者は27歳主婦, 0, ccddee輸血歴はない. 妊娠歴は第1回1983年3ヵ月で人工流産, 第2回1984年10ヵ月で男児, 第3回1986年10ヵ月で男児, 第4回1986年3ヵ月で自然流産. 新生児溶血性疾患は第2回, 第3回ともない. 4回のすべてに抗DIgG投与が行われている. 今回は1987年3月妊娠7週で来院した. この時点で低力価の抗E(間接抗グロブリン試験陰性, 低イオン強度ポリブレン法のみで陽性)を検出した. 妊娠11週に交通事故で骨折. 10月20日妊娠39週になりこれまでの抗Eが消失し, 低力価の抗Dが産生されたため経過を観察し10月27日妊娠40週で3, 520gの女児出産O, CcDeeであった. 臍帯血の直接抗グロブリン試験は陰性であったが, 酸解離液中には抗Dが溶出した. 児は新生児溶血性疾患の徴候はなく, 何ら特別の処置を施さなかった. 分娩時母体血清中の抗Dは間接抗グロブリン試験で32倍, 分娩1ヵ月後では64倍であった. 分娩後の抗DIgGの投与は行っていない. 夫はO, CDEeであった. 一般にABO適合の方がRh不適合が起きやすく, 妊娠回数が増すにつれ抗D産生率も上昇するといわれている. この症例では前記2つの条件にあてはまりなおかつ交通事故での損傷による胎盤出血があったと考えると, 抗DIgG投与にもかかわらず妊娠後期に抗Dが産生されたことが理解出来る. 現在抗DIgGの効果を完全にするために妊娠28週での投与も試みられており, 今回のような妊娠中の交通事故のような特殊な場合には追加投与することにより不適合妊娠が防止出来たものと考える. |
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ISSN: | 0546-1448 |