新たに見出された2種類のO型遺伝子について

〔目的〕1990年YamamotoらはABO血液型遺伝子のcDNAクローンを解析し, ABO各遺伝子の塩基配列を決定している. O型については261番目の塩基が欠失しているため, フレームシフトが起こり, アミノ酸がことごとく置換され, その結果転移酵素活性を示めせないことが推定されている. O型は既に機能を持たない遺伝子であるため, かなりの多型性が存在しているものと考え, 今回我々は, O遺伝子について詳細な解析を行った. その結果, 2ヶ所で新たに置換部位が見出されたので, 今までに判明している他の多型性と併せて報告する. 〔方法〕EDTA加末梢血からチオシアン酸グアニジン法を用い, D...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 1001
Main Authors 小林賢, 岩崎誠, 鈴木洋司, 阿藤みや子, 関口進
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1994
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ISSN0546-1448

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Summary:〔目的〕1990年YamamotoらはABO血液型遺伝子のcDNAクローンを解析し, ABO各遺伝子の塩基配列を決定している. O型については261番目の塩基が欠失しているため, フレームシフトが起こり, アミノ酸がことごとく置換され, その結果転移酵素活性を示めせないことが推定されている. O型は既に機能を持たない遺伝子であるため, かなりの多型性が存在しているものと考え, 今回我々は, O遺伝子について詳細な解析を行った. その結果, 2ヶ所で新たに置換部位が見出されたので, 今までに判明している他の多型性と併せて報告する. 〔方法〕EDTA加末梢血からチオシアン酸グアニジン法を用い, DNAを抽出した(この方法については昨年度の本学会で報告した). 抽出したDNA500ngをテンプレートとし, プライマーABO56, ABO36, ABO52N, ABO32N, ABO57, ABO39, ABO311などを組み合わせてPCRを行った. PCR条件はプライマーの組み合わせで異なるが, 熱変性と伸長反応はいずれも96℃1分, 72℃1分(または15分)で, アニーリングは60℃1分または65℃45秒である. 増幅されたDNA断片を制限酵素KpnI, BstEII, BssHII, BabI, MspI, AluI, MvaI, Sau3AI, MnlIなどで切断し, 電気泳動後, そのパターンを解析した. また併せて, 直接塩基配列決定法を用いてABI373A DNAシーケンサーにより塩基配列を調べた. 〔結果〕KpnI, BstEIIの切断パターンから261番目の塩基欠失が全例のO型に認められた. 1994年Grunnetらにより, 欠失のない新しいO遺伝子が見出されているが, 我々の解析した日本人集団の範囲において, このような変異は認められなかった. 新しいO型の塩基置換が646と826番目に見出された. 646ではT→A置換が, 826ではG→Aが, それぞれ認められた. それぞれの頻度は約30%と70%であった. 現在サンプル数を増やし, 詳細な検討を行っている.
ISSN:0546-1448