再生医療の将来

10年前, 再生医療が最先端医療として注目を浴びた時期があったが, 日本における医療機器, 医療材料の規制の厳しさから低迷期を迎えていたが, 京都大学山中博士のiPSにより再び脚光を浴びるようになった. しかし, iPSが再生医療として使われるためには多くのハードルを越えなければならず, 実際には日本の医療における再生医療は依然低迷期であると言っても過言ではない. それは現時点で, 再生医療製品, サービスが医療現場で主流となっていないことからも明らかである. その中で, 閉塞性動脈硬化症患者の自家末梢血幹細胞移植による血管再生は唯一多施設で臨床応用されている再生医療法である. 再生医療の将来...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 55; no. 5; p. 658
Main Author 森田育男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 16.11.2009
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ISSN1881-3011

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Abstract 10年前, 再生医療が最先端医療として注目を浴びた時期があったが, 日本における医療機器, 医療材料の規制の厳しさから低迷期を迎えていたが, 京都大学山中博士のiPSにより再び脚光を浴びるようになった. しかし, iPSが再生医療として使われるためには多くのハードルを越えなければならず, 実際には日本の医療における再生医療は依然低迷期であると言っても過言ではない. それは現時点で, 再生医療製品, サービスが医療現場で主流となっていないことからも明らかである. その中で, 閉塞性動脈硬化症患者の自家末梢血幹細胞移植による血管再生は唯一多施設で臨床応用されている再生医療法である. 再生医療の将来を考えた場合, その対象疾患を考慮する必要がある. ヒューマンサイエンス財団調べで, 再生医療技術で対象となる患者数の最も多い疾患は, 歯周病の110万人であり, 骨折, 虚血性心疾患などが続いている. 我々の研究室では, ナノテクノロジーを用いて, 歯周病治療, 骨再生, 血管再建を試みている. その中で, 血管再建法として, in vitroでパターニングした血管内皮細胞をマトリクスに転写することにより毛細血管を構築する系を考案した. すなわち, 1)光触媒を用いた独自の親疎水パターン形成技術を応用した基板作成, 2)血管内皮細胞をデザインされた基板上に培養後, 高気圧で脱細胞化した羊膜への転写, 管腔形成, ののち体内移植する方法であり, 使用する細胞は大網由来血管内皮細胞, 臍帯血, 自己血から単離・培養した血管内皮細胞である. 本講演においては, 我々の研究を中心に今後の再生医療の将来について考えてみたい.
AbstractList 10年前, 再生医療が最先端医療として注目を浴びた時期があったが, 日本における医療機器, 医療材料の規制の厳しさから低迷期を迎えていたが, 京都大学山中博士のiPSにより再び脚光を浴びるようになった. しかし, iPSが再生医療として使われるためには多くのハードルを越えなければならず, 実際には日本の医療における再生医療は依然低迷期であると言っても過言ではない. それは現時点で, 再生医療製品, サービスが医療現場で主流となっていないことからも明らかである. その中で, 閉塞性動脈硬化症患者の自家末梢血幹細胞移植による血管再生は唯一多施設で臨床応用されている再生医療法である. 再生医療の将来を考えた場合, その対象疾患を考慮する必要がある. ヒューマンサイエンス財団調べで, 再生医療技術で対象となる患者数の最も多い疾患は, 歯周病の110万人であり, 骨折, 虚血性心疾患などが続いている. 我々の研究室では, ナノテクノロジーを用いて, 歯周病治療, 骨再生, 血管再建を試みている. その中で, 血管再建法として, in vitroでパターニングした血管内皮細胞をマトリクスに転写することにより毛細血管を構築する系を考案した. すなわち, 1)光触媒を用いた独自の親疎水パターン形成技術を応用した基板作成, 2)血管内皮細胞をデザインされた基板上に培養後, 高気圧で脱細胞化した羊膜への転写, 管腔形成, ののち体内移植する方法であり, 使用する細胞は大網由来血管内皮細胞, 臍帯血, 自己血から単離・培養した血管内皮細胞である. 本講演においては, 我々の研究を中心に今後の再生医療の将来について考えてみたい.
Author 森田育男
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