HCV抗体測定法の特異性に関する検討
I. 目的:輸血後B型肝炎も広範囲でHBV(実際はHBs抗原測定)検査が施行されHBV陰性の血液が使用された結果, 殆ど問題は解決されたが, その後, 輸血後感染症として最も注目されていた非A非B型肝炎ウイルスの発見が暫く待たれていた. 最近, カイロン社で開発されたC型肝炎ウイルス(HCV)抗体測定用ELISAは, 非A非B肝炎ウイルスの70-80%をカバーする特異性の高い検査法として注日されている. 今回, 本キットを用い, 各種肝疾患に於けるHCV抗体との関連性, 特異性および一部輸血との関係を検討したので報告する. II. 対象および方法:本学第三内科および第一病理より組織学的に診断さ...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 383 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.1990
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | I. 目的:輸血後B型肝炎も広範囲でHBV(実際はHBs抗原測定)検査が施行されHBV陰性の血液が使用された結果, 殆ど問題は解決されたが, その後, 輸血後感染症として最も注目されていた非A非B型肝炎ウイルスの発見が暫く待たれていた. 最近, カイロン社で開発されたC型肝炎ウイルス(HCV)抗体測定用ELISAは, 非A非B肝炎ウイルスの70-80%をカバーする特異性の高い検査法として注日されている. 今回, 本キットを用い, 各種肝疾患に於けるHCV抗体との関連性, 特異性および一部輸血との関係を検討したので報告する. II. 対象および方法:本学第三内科および第一病理より組織学的に診断され, 提供を受けた非A非B型の急性肝炎9例, 慢性肝炎112例, 肝硬変8例および肝細胞癌15例, B型慢性肝炎33例, 他に非A非B型およびB型が関与しないと思われるアルコール性肝障害53例について, HCV抗体測定を実施した. III. 成績:疾患別のHCV抗体陽性率および測定値(O. D. )の平均±SDは非A非B型の急性肝炎11.1%(1/9)・0.25±0.66, 慢性肝炎66.1%(74/112)・1.32±0.90, 肝硬変75.0%(6/8)・1.35±0.92, 肝細胞癌80.0%(12/15)・1.40±0.81であり, B型慢性肝炎6.1%(2/33)・0.14±0.35, アルコール性肝障害では11.3%(6/53)・0.26±0.63であった. 非A非B型慢性肝疾患患者全体のHCV抗体陽性率は68.1%(92/135)であった. IV. 結諭:各種肝疾患に於いて非A非B型慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌とHCV抗体には高い関連性が示された. しかしながら非A非B型肝炎と確定診断された中にも約30%はHCV抗体陰性であることから, 他の非A非B型肝炎ウイルスの存在が示唆された. また輸血の既往との関連では非A非B型肝炎においてHCV抗体陽性率には特に差はないように思われた. |
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ISSN: | 0546-1448 |