肩関節周囲炎, 腰痛症に対する総合的関節可動域訓練の効果

現在の理学療法は主として欧米型だが, 東洋の整体, 脊椎調整, 経穴, 鍼, 灸やカイロプラクティックといった伝統的理学療法も古くから行われている. これらの伝統的理学療法の効果について, 主に関節可動域訓練を中心に紹介する. 「方法」最も一般的な疾患である肩関節周囲炎20例(72.9±9.4歳), 腰痛症19例(71.6±10.4歳)を対象とし, 肩関節周囲炎については, 胸鎖関節, 肩甲上腕関節, 肩甲助骨関節の, 腰痛については脊椎, 仙腸関節の関節可動域訓練を行った. 骨粗鬆症のある患者では過剰な負荷がかからぬよう十分注意した. 「結果」肩関節周囲炎では, 1週間間隔で3回の治療を行っ...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 37; no. 12; p. 1070
Main Authors 田中達也, 弥栄博文, 妹尾包人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.2000
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ISSN0034-351X

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Summary:現在の理学療法は主として欧米型だが, 東洋の整体, 脊椎調整, 経穴, 鍼, 灸やカイロプラクティックといった伝統的理学療法も古くから行われている. これらの伝統的理学療法の効果について, 主に関節可動域訓練を中心に紹介する. 「方法」最も一般的な疾患である肩関節周囲炎20例(72.9±9.4歳), 腰痛症19例(71.6±10.4歳)を対象とし, 肩関節周囲炎については, 胸鎖関節, 肩甲上腕関節, 肩甲助骨関節の, 腰痛については脊椎, 仙腸関節の関節可動域訓練を行った. 骨粗鬆症のある患者では過剰な負荷がかからぬよう十分注意した. 「結果」肩関節周囲炎では, 1週間間隔で3回の治療を行った結果, 約9割の患者で何らかの改善が見られた. 訓練直後に胸鎖関節の温感を訴える患者が多く見られたため, サーモグラフィーを実施したところ, 健常者は訓練によって胸鎖関節周囲の皮膚温が変化しないのに対し, 肩関節周囲炎の患者では約2度の上昇が見られた. 腰痛症でも1週間間隔で3回の治療を行った結果, 約8割の患者に何らかの改善が見られた. 副作用として, 肩関節周囲炎で訓練後の関節痛を訴える患者が2例あったが, 軽度で2,3日で回復した. 「考察」上述した主要な関節の可動域制限により, 血流が阻害されたり, 一部の骨, 神経, 筋に過剰な力学的負担がかかることによって, 肩関節周囲炎, 腰痛症が起こると考えられた. 「結論」欧米型理学療法に伝統的理学療法を組み合わせることにより, より大きな治療効果が上がると考えられた.
ISSN:0034-351X