頚部血管病変を合併した心筋梗塞患者に対する冠動脈バイパス手術の麻酔経験
冠動脈バイバス手術を受ける患者の多くが主病変以外の血管病変を合併している場合が多い. 特に脳梗塞の既往のある場合や術前検査で頚部血管病変が指摘されている場合では術後中枢神経障害の危険性が高い. 重篤な頚部血管狭窄および脳梗塞を合併した患者の麻酔を経験したので報告する. 【症例】67歳, 男性. 急性心筋梗塞. 既往歴に左頭頂葉の脳梗塞. 右内頚動脈90%, 左内頚動脈50%, 両側椎骨動脈90%の頚部血管狭窄があったので, 心拍動下冠動脈バイパス手術を行った. 術中の脳虚血のモニタリングとして前額部に装着したNIRO-300(浜松ホトニクス製)からHb酸素飽和度(TOI), BIS(Aspec...
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Published in | 蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 214 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
10.10.2003
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 冠動脈バイバス手術を受ける患者の多くが主病変以外の血管病変を合併している場合が多い. 特に脳梗塞の既往のある場合や術前検査で頚部血管病変が指摘されている場合では術後中枢神経障害の危険性が高い. 重篤な頚部血管狭窄および脳梗塞を合併した患者の麻酔を経験したので報告する. 【症例】67歳, 男性. 急性心筋梗塞. 既往歴に左頭頂葉の脳梗塞. 右内頚動脈90%, 左内頚動脈50%, 両側椎骨動脈90%の頚部血管狭窄があったので, 心拍動下冠動脈バイパス手術を行った. 術中の脳虚血のモニタリングとして前額部に装着したNIRO-300(浜松ホトニクス製)からHb酸素飽和度(TOI), BIS(Aspect Medical Systems社製)からBIS値およびsuppression ratio(SR), さらに内頚静脈球部に留置したオキシメトリカテーテル(Edwards Lifesciences社製)から内頚静脈酸素飽和度(SjvO2), 内頚静脈酸素分圧(PjvO2)を記録した. 後側枝吻合時の平均血圧の低下とともにTOIも低下した. しかし, 心係数の低下は軽度で, SjvO2, PjvO2, BIS値の変化も小さく, SRも異常な上昇を認めなかった. 吻合終了後にはそれぞれの基準値に戻った. ICU入室以後には脳神経学的異常を来すことなく周術期を終えた. 【考察】脳虚血性疾患を合併した患者に対する種々の脳代謝モニタリング法があるが, 脳循環の評価と虚血時の対処には各モニターの特徴とその限界を熟知した上で併用することが重要であると思われた. 【結語】高度頚部血管病変を合併した患者の冠動脈バイパス手術に対して安全な周術期管理を行うことが可能であった. |
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ISSN: | 0288-4348 |