血清肝炎治癒後の肝機能の推移
我々は昭和36年1月以降当科で保存血を使用, 血清肝炎を発生した外科的疾患44例(男30例, 女14例)について退院後も引続き肝機能検査を追求し, その推移を検討して見た. 自覚症状は退院後6カ月以内において24%が食思不振, 52%が易労感, 13%が肝腫大, 黄疸を訴えていたが, 漸次消退し, 1年半後には2, 3の例が易労感を訴えるに過ぎない. 黄疸指数異常例は6カ月以内において28%, 1年以内12%であるが, 1年半後においては全例が正常値を示した. B.S.P.値は6カ月以内においては63%, 1年半後においてもなお41.6%が異常値を示し, また尿中ウロビリノーゲン陽性例は6カ月...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 11; no. 1; p. 38 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.12.1964
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 我々は昭和36年1月以降当科で保存血を使用, 血清肝炎を発生した外科的疾患44例(男30例, 女14例)について退院後も引続き肝機能検査を追求し, その推移を検討して見た. 自覚症状は退院後6カ月以内において24%が食思不振, 52%が易労感, 13%が肝腫大, 黄疸を訴えていたが, 漸次消退し, 1年半後には2, 3の例が易労感を訴えるに過ぎない. 黄疸指数異常例は6カ月以内において28%, 1年以内12%であるが, 1年半後においては全例が正常値を示した. B.S.P.値は6カ月以内においては63%, 1年半後においてもなお41.6%が異常値を示し, また尿中ウロビリノーゲン陽性例は6カ月以内62%, 1年以内58%, 1年半以上を経ても41.6%が改善されていない. 血清膠質反応はKunkel, Gros反応に比しC.C.F., T.T.T.反応は異常値を示す例が多いが, いずれも経時的に改善され, 1年半後には2, 3例を除き, 正常に復した. 血清G.O.T., G.P.T.値は6カ月以内においてそれぞれ46, 42%が, 1年以内56, 48%, 1年半以内37, 33%, 1年半後においても25, 16%が高値を示し, B.S.P.値, 尿中ウロビリノーゲンの所見とほゞ平行的関係を示した. 各種肝機能検査成績を綜合して見ると6カ月以内においては数種以上の検査がいずれも異常を示すか, 1年以上を経過すると1, 2の検査のみ異常を示すに至る. 即ち潜在性の肝障害は2, 3種のみの検査では見逃される怖れがあり, 少くも数種の検査, 特に尿中ウロビリノーゲン, G.O.T., G.P.T.値, B.S.P.値の測定が不可欠である. 半年後においても5種以上の検査に異常を認めた5例について見ると, 各例共経時的に改善されるが, 各種検査が平行して異常な場合と, G.O.T., G.P.T.値のみが高値を示す場合とがあり, 診断上留意すべき点である. 以上の如く血清肝炎は1年以上を経てなお肝障害を示す例が少くなく, 慢性化への推移も予測され, 予後は必ずしも良好ではない. |
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ISSN: | 0546-1448 |