輸血が原因でB型肝炎が発生したと思われる急性肝炎の1症例
【はじめに】輸血用血液スクリーニングとして, HI法によるHBc抗体とELISA法によるHCV抗体検査が加わり, 輸血後肝炎は明らかに減少した. 今回, 我々は HBc抗体価が陰性血の輸血による急性B型肝炎を発症した1症例を経験したので報告する. 【症例】74歳女性. 腹部大動脈瘤と高血圧症にて加療中であったが, 1997年3月22日腹部大動脈瘤切迫破裂のため緊急手術を行い, 日赤血液センターからの赤血球濃厚液2単位製剤1本と1単位製剤2本の輸血が行われた. 1997年7月3日より全身倦怠感と黄疸が出現し他院を受診したが, 肝庇護療法にて改善を認めないため, 7月17日当院に入院となった. 入...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 2; p. 149 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1998
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 【はじめに】輸血用血液スクリーニングとして, HI法によるHBc抗体とELISA法によるHCV抗体検査が加わり, 輸血後肝炎は明らかに減少した. 今回, 我々は HBc抗体価が陰性血の輸血による急性B型肝炎を発症した1症例を経験したので報告する. 【症例】74歳女性. 腹部大動脈瘤と高血圧症にて加療中であったが, 1997年3月22日腹部大動脈瘤切迫破裂のため緊急手術を行い, 日赤血液センターからの赤血球濃厚液2単位製剤1本と1単位製剤2本の輸血が行われた. 1997年7月3日より全身倦怠感と黄疸が出現し他院を受診したが, 肝庇護療法にて改善を認めないため, 7月17日当院に入院となった. 入院時AST 1546 IU, ALT 1056 IU, 総ビリルビン15. 2mg/dlと肝障害を認めた. ウイルスマーカーでは, HBs抗原(RPHA, EIA)陽性, HBs抗体(PHA)陰性, HBc抗体(HI)陽性, HBc-IgM抗体(EIA)陽性, HBV DNA(nested PCR)陽性, HCV(第2世代)陰性, IgM・HA抗体陰性であった. 画像診断においても, 黄疸の原因は肝細胞性黄疸によるものと思われた. 約1ヶ月後には, AST, ALT正常化し, 3ヶ月後には HBs抗原(EIA)陰性, HBc抗体(MEIA)73%になった. 日赤における供血後調査において, 当該供血者1人から, HBs抗原(EIA)陽性, HBc抗体(HI)陰性, HBc-IgM抗体(EIA)陰性, HBV DNA(nested PCR)陽性の結果が得られた. 以上の経過より急性B型肝炎の原因が, 輸血による感染であることが確認された. 【結語】HBc抗体検査スクリーニングを開始以後も, HBc抗体高力価血液による輸血後感染の報告が散見されている. そのため1997年4月よりHBc抗体価のカットオフが2^6 から2^5 へ変更された. しかし今回のケースのように, ごく微量のウイルス混入による感染の危険性は残されている. 輸血後B型肝炎の撲滅には, さらに高感度のスクリーニング検査の導入が必要と思われる. |
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ISSN: | 0546-1448 |