小児術前貯血式自己血輸血の現状について

輸血の副作用を回避する手段として自己血輸血が推奨されているが, 実際に余命の観点から最も適応と考えられる小児においては, まだ一般的な治療法として普及していない. 今回我々は15歳以下の小児における自己血輸血の特徴, 安全性等について検討した. 対象と方法:当院輸血部で過去5年間に自己血貯血を施行した15歳未満の小児で, 開始前Hb12~14g/dl, 1回採血量が循環血液量の約10%, 貯血間隔を原則として1週間とし連続3回以上採血し得た20症例(A群:10歳未満10例, B群:10歳~15歳未満10例)を対象とし, 貯血時のHbの動きおよびHb増加量(1週間の赤血球造血量)について検討した...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 708 - 709
Main Authors 小浜浩介, 前畠良智, 丸山芳一, 下野治子, 上国料知子, 舞木弘幸, 肥後恵子, 渡辺紘子, 納光弘, 新名主宏一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1998
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ISSN0546-1448

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Summary:輸血の副作用を回避する手段として自己血輸血が推奨されているが, 実際に余命の観点から最も適応と考えられる小児においては, まだ一般的な治療法として普及していない. 今回我々は15歳以下の小児における自己血輸血の特徴, 安全性等について検討した. 対象と方法:当院輸血部で過去5年間に自己血貯血を施行した15歳未満の小児で, 開始前Hb12~14g/dl, 1回採血量が循環血液量の約10%, 貯血間隔を原則として1週間とし連続3回以上採血し得た20症例(A群:10歳未満10例, B群:10歳~15歳未満10例)を対象とし, 貯血時のHbの動きおよびHb増加量(1週間の赤血球造血量)について検討した. また全症例を対象に貯血時の副作用及び同種血回避率について検討した. 結果:1. Hb値についてはA群で1週目に, B群においては2週目まで低下が認められたが, 以降は不変であった. 両群とも平均でHb11.5g/dl以上を維持しており, 明らかな貧血は認められなかった. 2. Hb増加量についてはA群については早期に(1週目に)急増が認められたが, B群においては4週目まで徐々に増加傾向を示した. 両群とも3週目に一回脱血量と造血量が一致する臨界点となった. 3. 貯血時の副作用は全症例96例を対象としてA群で6例(15%), B群で1例(1%)に認められ, 幼少少児に頻度が高く, 軽度のVVRがほとんどであった. 4. 同種血は全症例中A群で3例(7.7%), B群で7例(12.3%)に併用され, 全体で89.6%の同種血回避率となった. 考察:小児においては成人に比し造血能が極めて良好であ, この点からは貯血はかなり容易であると考えられる. 一方, 程度は軽いものの, 幼少児ほど貯血時の副作用(VVR)に注意する必要がある. また最終的な同種血輸血回避率は充分とはいえず, その原因として採血手技の困難性, 患者の了解不能, 貯血期間不足等が挙げられた.
ISSN:0546-1448