日大臍帯血バンクの現状と今後の課題
【目的】最近, 骨髄, 末梢血に代わる第3の造血幹細胞源として臍帯血の利用が注目されている. 当院においても平成10年8月に日大臍帯血バンクを設立し活動を開始した. 輸血室は臍帯血の分離・保存およびデータの管理を行っているが, 臍帯血の凍結保存を開始して4か月が経過した. その現状と今後の課題について解析を行ったので報告する. 【対象・方法】平成10年8月から11月までに採取した44件を対象とした. 胎盤娩出後に採取(40ml以上)した臍帯血から, 東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門の方法に準拠して有核細胞を分離し, プログラムフリーザーを用いて凍結した後, 液体窒素中に保存した....
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 215 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1999
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 【目的】最近, 骨髄, 末梢血に代わる第3の造血幹細胞源として臍帯血の利用が注目されている. 当院においても平成10年8月に日大臍帯血バンクを設立し活動を開始した. 輸血室は臍帯血の分離・保存およびデータの管理を行っているが, 臍帯血の凍結保存を開始して4か月が経過した. その現状と今後の課題について解析を行ったので報告する. 【対象・方法】平成10年8月から11月までに採取した44件を対象とした. 胎盤娩出後に採取(40ml以上)した臍帯血から, 東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門の方法に準拠して有核細胞を分離し, プログラムフリーザーを用いて凍結した後, 液体窒素中に保存した. バンクヘの登録に必要な各種検査を実施すると共に, 採取量, 有核細胞数, CD34陽性細胞数, CFU-GM数および有核細胞数とCD34陽性細胞数の分離前後(DMSO添加前/HES添加前)の回収率を検討した. 【結果】1)全ての検査が終了してバンクに登録可能(6か月後の臍帯血提供児の異常の有無は未確認)となったものは18件(40.9%)であった. それらの採取量の平均値は60.0±14.5ml, 有核細胞数は(62±2.8)×10^8 個, CD34陽性細胞数は(2.5±2.4)×10^6 個であり, 回収率はそれぞれ66.1±7.6%, 72.4±20.9%であった. またCFU-GM数は(7.3±7.3)×10^5 個であった. 2)バンクに登録できなかった26件の内訳は, 採取量不足が11件(25.0%), 細菌汚染が6件(13.6%), 有核細胞数不足が4件(9.1%), その他が5件(11.4%)であった. 【考察】1)44件中11件が40ml以下の採取であり, また有核細胞数不足の4件も採取量が少ないために規定数に達しないことが判明した. また細菌汚染も高頻度に発生しているため消毒法を含め採取法の検討が必要と思われた. 2)バンクに登録可能であった18件の保存細胞数は遜色ないと思われたが, 回収率が低いので細胞分離法とテクニックの再検討が急務と思われた. 臍帯血バンクヘの登録は複数部門の協力の下に成り立つものであり, 各部門が連絡を密にし最大限に努力する必要がある. 今後, 各地域臍帯血バンク間のネットワークに参加できるよう品質と安全性の確保に努めて行きたい. |
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ISSN: | 0546-1448 |