X線透視ビデオ法による舌癌術後症例の嚥下動態の解析
今回我々はX線透視ビデオ法を用いて舌の切除範囲が嚥下動態に及ぼす影響を評価した. 対象症例は前腕皮弁による再建術を受けた舌癌術後4週間以内の舌部分切除症例4例, 舌半側切除症例6例及び健常者12例である. 舌部分切除症例では11回, 舌半側切除症例では20回, 健常者では59回の嚥下動作を分析した. 誤嚥の定性的評価は造影剤の流入の程度によって, 異常なし, 喉頭内流入, 気管内流入と区分した. 定量的評価としては, 造影剤の最先端が舌根部を通過してから喉頭挙上が開始されるまでの喉頭挙上開始時間, 造影剤の最先端が舌根部を通過してから輪状咽頭筋領域に到達するまでの輪状咽頭筋領域到達時間, 輪状...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 1; no. 1; pp. 129 - 130 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
01.12.1997
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ISSN | 1343-8441 |
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Summary: | 今回我々はX線透視ビデオ法を用いて舌の切除範囲が嚥下動態に及ぼす影響を評価した. 対象症例は前腕皮弁による再建術を受けた舌癌術後4週間以内の舌部分切除症例4例, 舌半側切除症例6例及び健常者12例である. 舌部分切除症例では11回, 舌半側切除症例では20回, 健常者では59回の嚥下動作を分析した. 誤嚥の定性的評価は造影剤の流入の程度によって, 異常なし, 喉頭内流入, 気管内流入と区分した. 定量的評価としては, 造影剤の最先端が舌根部を通過してから喉頭挙上が開始されるまでの喉頭挙上開始時間, 造影剤の最先端が舌根部を通過してから輪状咽頭筋領域に到達するまでの輪状咽頭筋領域到達時間, 輪状咽頭筋の弛緩開始から弛緩終了までの輪状咽頭筋反応時間を計測した. 切除範囲と誤嚥の重症度の関係を検討したところ舌半側切除症例の方が気管内流入の割合が高く, 誤嚥の重症度が高いと考えられた, また, 誤嚥の重症度と嚥下の定量的な評価との関連については, 喉頭挙上開始時間と輪状咽頭筋領域到達時間は全般的に重症度が高くなるにつれて延長する傾向がみられたが, 輪状咽頭筋反応時間は, 重症度による差が顕著ではなかった. また切除範囲と定量的な評価の検討においては, 喉頭挙上開始時間と輪状咽頭筋領域到達時間の2計測項目では舌の切除範囲が広いほど延長する傾向がみられたが, 輪状咽頭筋反応時間は舌の切除範囲による差がみられなかった. 以上より, 舌切除症例では嚥下機能の低下がみられ, 舌の切除範囲が舌根に及ばない舌部分切除症例でも反射機能や運動性の低下が原因となり, 嚥下の咽頭期にも障害がみられる. また舌の切除範囲が舌根部に及んだ場合には, 前腕皮弁による再建術を行っても嚥下機能が著しく障害され, 術後早期では誤嚥の危険性が高いことが示された. |
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ISSN: | 1343-8441 |