Bispectral index(BIS)が心臓手術中の脳虚血モニタとして有用と考えられた1症例
心臓手術中の術中覚醒は, 他の外科手術と比較して高率であり, 術中の麻酔深度モニタの重要性が言われている. 当院ではBISを麻酔深度の指標として心臓手術の麻酔管理を行っている. 今回, BISが術中の脳虚血モニタとしても有用と考えられた症例を経験したので報告する. 〔症例〕69才男性. 平成12年12月から, 労作時の胸部圧迫感を自覚するようになった. 平成13年1月に, 白内障手術を受けるため近医に入院した際に, 3度房室ブロックを指摘されペースメーカー(DDD)植え込み術を受けた. この時の検査で冠動脈左主幹部, 左前下降枝の狭窄を指摘され, 冠動脈バイパス術(2枝)が行われることになった...
Saved in:
Published in | 蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 276 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
12.09.2001
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0288-4348 |
Cover
Summary: | 心臓手術中の術中覚醒は, 他の外科手術と比較して高率であり, 術中の麻酔深度モニタの重要性が言われている. 当院ではBISを麻酔深度の指標として心臓手術の麻酔管理を行っている. 今回, BISが術中の脳虚血モニタとしても有用と考えられた症例を経験したので報告する. 〔症例〕69才男性. 平成12年12月から, 労作時の胸部圧迫感を自覚するようになった. 平成13年1月に, 白内障手術を受けるため近医に入院した際に, 3度房室ブロックを指摘されペースメーカー(DDD)植え込み術を受けた. この時の検査で冠動脈左主幹部, 左前下降枝の狭窄を指摘され, 冠動脈バイパス術(2枝)が行われることになった. 麻酔導入前からBISと近赤外線分光(NIR)の測定を開始した. フェンタニルとミダゾラムで麻酔を導入し, ベクロニウムで筋弛緩を得て気管挿管を行った. フェンタニルとプロポフォールで麻酔を維持し, 手術中は硝酸イソソルビド, ジルチアゼムを持続静注した. 人工心肺中はペーシングを止め, 大動脈遮断解除とともにペーシング(DOO), カテコラミンの持続静注を開始した. 人工心肺離脱直後は, 血行動態は良好に保たれていたが, 自己心拍とペーシングが競合するようになり, 血圧が低下し急速に心不全となった. 脈圧が消失し, 血圧は20mmHg以下まで低下した. 手術中BISは30台後半から50台前半で安定していて, 人工心肺離脱直後は55であったが, 血圧低下とともに急速に低下して脈圧の消失とともに0となった. NIRの脳組織酸素飽和度(rSO_2 )は左右それぞれ51, 53から28, 27%まで低下した. エピネフリン0.1mgを静注し, 人工心肺を再開したところ, BIS, rSO_2 とも速やかに回復した. その後は著変なく手術を終了した. 術後中枢神経障害を認めなかった. 〔考察・まとめ〕BISは, 本来は鎮静レベルのモニタである. しかし, 本症例のような心原性ショックにおいては, 脳血流の変化に伴う脳波の変化を鋭敏に捉え, 脳虚血の発生, 回復を鋭敏に反映するため, 心臓手術中の脳虚血モニタの1つとして有用と考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0288-4348 |