鍼と気 臨床と研究を通して

私は臨床家でありながら大学で研究する機会を与えられた。ヒトを対象に無侵襲法で鍼刺激の脳内神経伝導、末梢の血流、心拍出量などの測定や、また免疫系への影響を研究した。しかし、日常の臨床から鍼の効果はこのような西洋医学的な部分の研究方法では真価は証明できないのではないかという疑問を感じた。鍼灸は心身一如を旨としており、また理論のみではなく技術が伴うから、現代の科学論では次元が異なると考えた。 鍼灸理論の基本は “気” であるから、気の研究の必要性を感じ文献的に調べた。その過程から西洋医学的に解明するには不可能な部分が多すぎると考えた。科学的研究の必要性は認めるが、現行の研究方法では鍼灸の真髄の証明は...

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Published in全日本鍼灸学会雑誌 Vol. 56; no. 1; pp. 2 - 15
Main Author 田山, 文隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 全日本鍼灸学会 01.02.2006
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ISSN0285-9955
1882-661X
DOI10.3777/jjsam.56.2

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Summary:私は臨床家でありながら大学で研究する機会を与えられた。ヒトを対象に無侵襲法で鍼刺激の脳内神経伝導、末梢の血流、心拍出量などの測定や、また免疫系への影響を研究した。しかし、日常の臨床から鍼の効果はこのような西洋医学的な部分の研究方法では真価は証明できないのではないかという疑問を感じた。鍼灸は心身一如を旨としており、また理論のみではなく技術が伴うから、現代の科学論では次元が異なると考えた。 鍼灸理論の基本は “気” であるから、気の研究の必要性を感じ文献的に調べた。その過程から西洋医学的に解明するには不可能な部分が多すぎると考えた。科学的研究の必要性は認めるが、現行の研究方法では鍼灸の真髄の証明は不可能であろう。 東洋医学の解明にはマイケル・ポラニーの暗黙知や今西錦司の類推するなどの思想を包括した、新しい研究方法の開発が優先されてこそ可能になるのではないか。
ISSN:0285-9955
1882-661X
DOI:10.3777/jjsam.56.2