結腸・直腸癌の肺転移切除症例の検討

1998年1月から2009年6月までに,結腸癌もしくは直腸癌の肺転移に対し当科で肺切除を施行した21例を対象とし,臨床像・予後・予後に影響を与えた因子についてレトロスペクティブに検討した.男性が11例で女性が10例,肺手術時の平均年齢は66歳であった.原発巣は結腸8例,直腸13例で,原発巣の病期はII期7例,IIIA期5例,IIIB期2例,IV期7例であり,IV期7例は全例同時性肺転移症例であった.原発巣手術から肺手術までの期間は,平均894日であった.同時性症例では,腸管の手術と肺の手術以外に肝切除を行った症例が2例あった.1回の手術で切除した肺病変の数は最高3個で,平均1.29個,大きさは...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in山口医学 Vol. 59; no. 4; pp. 173 - 177
Main Authors 林, 雅太郎, 田中, 俊樹, 竹本, 圭宏, 原田, 栄二郎, 都志見, 貴明, 上田, 和弘, 榎, 忠彦, 濱野, 公一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2010
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:1998年1月から2009年6月までに,結腸癌もしくは直腸癌の肺転移に対し当科で肺切除を施行した21例を対象とし,臨床像・予後・予後に影響を与えた因子についてレトロスペクティブに検討した.男性が11例で女性が10例,肺手術時の平均年齢は66歳であった.原発巣は結腸8例,直腸13例で,原発巣の病期はII期7例,IIIA期5例,IIIB期2例,IV期7例であり,IV期7例は全例同時性肺転移症例であった.原発巣手術から肺手術までの期間は,平均894日であった.同時性症例では,腸管の手術と肺の手術以外に肝切除を行った症例が2例あった.1回の手術で切除した肺病変の数は最高3個で,平均1.29個,大きさは平均19.1mmであった.肺の手術術式は部分切除が14例と最も多く,区域切除が1例,肺葉切除が6例であった.左右両肺の部分切除を同時に行った症例も1例あったが,周術期に大きな合併症を併発した症例はなかった.遠隔期死亡例7例のうち原病死が5例で,肺切除後の5年生存率は45.2%であった.肺手術後に再々発が確認された症例は9例で,部位は肺と肝臓が4例ずつ,局所再発が1例であった.肺切除後の無再発5年生存率は29.8%であった.背景因子別では経過中に肝転移を認めた8例で累積生存率が低い傾向を認めたが,その他の因子には有意差は認めなかった.結腸・直腸癌の肺転移症例においては完全切除が可能であれば良好な予後が期待できるが,予後規定因子については更なる検討が必要である.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.59.173