職業性胆管がんの発生と化学物質管理について―ジクロロプロパンによる肝臓への影響を中心として

「1. はじめに」 2014年6月に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が公布され, 化学物質管理のあり方が見直された. この背景には, 2012年に報道された大阪の印刷事業場のオフセット印刷部門の元従業員や従業員に多発した胆管がんの事例がある. この事例を踏まえ, 2013年3月に厚生労働省による「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」では, 胆管がんはジクロロメタン(DCM)または1,2-ジクロロプロパン(DCP)に長期間, 高濃度曝露することにより発症し得ると医学的に推定でき, 当該事業場で発生した胆管がんは, DCPに長期間, 高濃度曝露したことが原因で発症した蓋然性...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 58; no. 2; pp. 78 - 83
Main Authors 柳場, 由絵, 須田, 恵, 豊岡, 達士, 王, 瑞生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本産業衛生学会 2016
日本産業衛生学会
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Summary:「1. はじめに」 2014年6月に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が公布され, 化学物質管理のあり方が見直された. この背景には, 2012年に報道された大阪の印刷事業場のオフセット印刷部門の元従業員や従業員に多発した胆管がんの事例がある. この事例を踏まえ, 2013年3月に厚生労働省による「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」では, 胆管がんはジクロロメタン(DCM)または1,2-ジクロロプロパン(DCP)に長期間, 高濃度曝露することにより発症し得ると医学的に推定でき, 当該事業場で発生した胆管がんは, DCPに長期間, 高濃度曝露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いことが報告された. この事業所ではDCPやDCMを含んでいる洗浄剤が使用されていた. 当時, 洗浄剤に含まれるDCPは特別規則の対象外であったが, 専門家による検討会を経て, 使用量や使用方法によっては労働者の安全や健康に害を及ぼす恐れがあると判断され, 同年10月, DCPは特定化学物質障害予防規則の規制対象物質となった.
ISSN:1341-0725
1349-533X
DOI:10.1539/sangyoeisei.wadai15005