悪性中皮腫体腔液に出現したhump状細胞質突起を有する鋳型細胞の検討(第25回日本気管支学会総会)

【目的】体腔液細胞診における悪性中皮腫診断は, 反応性中皮細胞や転移性腺癌細胞との鑑別にしばしば苦慮することがある. 今回われわれは, 上皮型悪性中皮腫症例体腔液に出現したhump状細胞質突起を有する鋳型細胞に着目し, その形態学的特徴について検討した. 【対象と方法】体腔液に異型中皮細胞が出現し, 組織診断にて上皮型の悪性中皮腫と確診し得た4症例を用いた. パパニコロウ染色および免疫染色による細胞形態学的特徴と, 体腔液材料を用いたセルブロック法による電子顕微鏡的観察を行い比較検討した. 【結果】パパニコロウ染色標本に出現していた比較的小型の鋳型細胞は, 複数個の中皮細胞によって形成されてお...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in気管支学 Vol. 24; no. 3; p. 215
Main Authors 濱川, 真治, 鈴木, 道明, 清水, 誠一郎, 松岡, 緑郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2002
日本気管支学会
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】体腔液細胞診における悪性中皮腫診断は, 反応性中皮細胞や転移性腺癌細胞との鑑別にしばしば苦慮することがある. 今回われわれは, 上皮型悪性中皮腫症例体腔液に出現したhump状細胞質突起を有する鋳型細胞に着目し, その形態学的特徴について検討した. 【対象と方法】体腔液に異型中皮細胞が出現し, 組織診断にて上皮型の悪性中皮腫と確診し得た4症例を用いた. パパニコロウ染色および免疫染色による細胞形態学的特徴と, 体腔液材料を用いたセルブロック法による電子顕微鏡的観察を行い比較検討した. 【結果】パパニコロウ染色標本に出現していた比較的小型の鋳型細胞は, 複数個の中皮細胞によって形成されており, (1)細胞密着像, (2)細胞質侵入像, (3)hump状細胞質突起を有する鋳型細胞, (4)いわゆるpair cell, (5)多細胞性鋳型細胞集塊形成という一連の過程が認識された. 電子顕微鏡的観察にて, hump状細胞質突起の細長いmicrovilliと, 核周囲性および細胞膜近傍に中間径フィラメントの集簇を認め, 後者の所見はサイトケラチン5/6の免疫染色陽性像とほぼ一致していた. 【結論】hump状細胞質突起を有する鋳型中皮細胞を中心とする一連の細胞像は, 単個の中皮腫細胞が細胞集塊形成に至るまでの連続的過程を示していると推察され, その細胞生物学的意義を考えさせられた. また, これら一連の細胞像には特徴があり, 上皮型悪性中皮腫を疑う有用な指標の一つに成り得るものと考えられた.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.24.3_215_3