甲状腺乳頭癌培養細胞の病理生物学的特性

甲状腺乳頭癌は増殖速度が遅く培養細胞株の樹立が難しいため,その実験モデルとなる細胞は少ない。甲状腺乳頭癌由来の3種の培養細胞,KTC-1,TPC-1,K-1の病理生物学的特性を,未分化癌由来の2種の培養細胞,TTA-1,TTA-2と比較検討した。 各培養細胞の増殖はKTC-1,TPC-1,K-1の順で,KTC-1が最も遅く,K-1が最も早くTTA-1,TTA-2とほぼ同等であった。細胞形態学的には,KTC-1とTPC-1は比較的均一で,特にKTC-1は細胞極性,濾胞様の配列を示した。K-1はより多型が強く,巨細胞が混在し,TTA-1,TTA-2に類似していた。甲状腺特異的転写因子TTF-1タン...

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Published inJOURNAL OF THE KYORIN MEDICAL SOCIETY Vol. 39; no. 3+4; pp. 69 - 78
Main Authors 大森, 嘉彦, 鈴木, 瞳, 松本, 裕文, 安井, 英明, 北澤, 暁子, 菅間, 博, 坂本, 穆彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 杏林医学会 2008
The Kyorin Medical Society
Subjects
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ISSN0368-5829
1349-886X
DOI10.11434/kyorinmed.39.69

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Summary:甲状腺乳頭癌は増殖速度が遅く培養細胞株の樹立が難しいため,その実験モデルとなる細胞は少ない。甲状腺乳頭癌由来の3種の培養細胞,KTC-1,TPC-1,K-1の病理生物学的特性を,未分化癌由来の2種の培養細胞,TTA-1,TTA-2と比較検討した。 各培養細胞の増殖はKTC-1,TPC-1,K-1の順で,KTC-1が最も遅く,K-1が最も早くTTA-1,TTA-2とほぼ同等であった。細胞形態学的には,KTC-1とTPC-1は比較的均一で,特にKTC-1は細胞極性,濾胞様の配列を示した。K-1はより多型が強く,巨細胞が混在し,TTA-1,TTA-2に類似していた。甲状腺特異的転写因子TTF-1タンパク質はKTC-1で発現したが,TPC-1,K-1およびTTA-1,TTA-2では発現しなかった。癌抑制遺伝子p53の遺伝子産物であるp53タンパク質の過剰発現はTTA-1,TTA-2ではみられるが,KTC-1,TPC-1,K-1では認められなかった。KTC-1はSCIDマウスへの移植により,乳頭癌類似の核所見を示す小腫瘤を形成した。K-1はNudeマウスへの移植で索状から充実性の腫瘍を形成した。TPC-1はSCIDマウス,Nudeマウスの何れでも移植腫瘍を形成しなかった。また,TTA-1,TTA-2は急速に増大する腫瘍を形成し,短期間でマウスは死亡した。 甲状腺乳頭癌由来の培養細胞の特性を比較検討した結果,KTC-1,TPC-1,K-1の順に乳頭癌としての病理生物学的特性を保持していることが明らかとなった。KTC-1は甲状腺乳頭癌のモデル細胞として有用と考えられる。
ISSN:0368-5829
1349-886X
DOI:10.11434/kyorinmed.39.69