神経細胞の同期発火と行動:カエルの逃避行動に網膜細胞の同期した周期発火が本質的な役割を果たす

1. スパイク発火と情報の符号化 感覚系の受容器は, 与えられた刺激の時空間的パターンや強度に応じてアナログ的な緩電位応答を発生する. この緩電位応答は受容器自身またはシナプス後細胞によってスパイク列に変換され, 高次中枢に伝えられる. 高次中枢では, このスパイク列に基づいて感覚情報を復元し, 外界の知覚や認知を行っていると考えられる. 受容器に同一の刺激(たとえばFig. 1a)を提示しても, 高次中枢に伝導してくるスパイクは, その発火のタイミングや頻度が試行ごとに微妙に揺らぐ(Fig. 1b). デジタル処理を行うコンピューターにとってはパルスのタイミングがたとえばマイクロ秒オーダーで...

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Published in生物物理 Vol. 47; no. 6; pp. 355 - 361
Main Author 立花, 政夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2007
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.47.355

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Summary:1. スパイク発火と情報の符号化 感覚系の受容器は, 与えられた刺激の時空間的パターンや強度に応じてアナログ的な緩電位応答を発生する. この緩電位応答は受容器自身またはシナプス後細胞によってスパイク列に変換され, 高次中枢に伝えられる. 高次中枢では, このスパイク列に基づいて感覚情報を復元し, 外界の知覚や認知を行っていると考えられる. 受容器に同一の刺激(たとえばFig. 1a)を提示しても, 高次中枢に伝導してくるスパイクは, その発火のタイミングや頻度が試行ごとに微妙に揺らぐ(Fig. 1b). デジタル処理を行うコンピューターにとってはパルスのタイミングがたとえばマイクロ秒オーダーで(>クロック周波数の逆数)揺らぐだけで致命的な欠陥となるが, あいまいさが特徴である生物にとってはスパイク発火のタイミングがたかだかミリ秒オーダーで揺らいでも許容できるだろう, という考え方もありうる. 感覚系でしばしば行われる実験を思い起こしてみよう.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.47.355