ダイアライザー膜素材が血液透析患者の血清総蛋白, アルブミン濃度に及ぼす影響

近年の研究から,透析膜の高い生体適合性と尿毒症性物質の除去が,患者の生命予後の改善に大きな影響を与えていることが示唆され,現在ではハイフラックス膜であるポリスルホン (PS) 膜が広く使われている。しかし,一般にハイフラックス膜での除去性能の向上は,同時に透析膜からのアルブミン漏出を引き起こすことが懸念されている。そこで今回,最近開発されたアルブミン漏出を極力抑えたPS膜を用い,対象としてアルブミン漏出が少なくかつ生体適合性が良いことで用いられているethylenvinylalcohol (EVAL) 膜とを,6か月間ずつ連続使用して膜素材の違いが透析患者の血清総蛋白値,アルブミン値に与える影...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 58; no. 1; pp. 13 - 20
Main Authors 倉持, 元, 村山, 正樹, 佐藤, 舞子, 長谷川, 伸, 加藤, 崇, 大島, 和佳子, 山田, 勝身
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2009
日本農村医学会
Subjects
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.58.13

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Summary:近年の研究から,透析膜の高い生体適合性と尿毒症性物質の除去が,患者の生命予後の改善に大きな影響を与えていることが示唆され,現在ではハイフラックス膜であるポリスルホン (PS) 膜が広く使われている。しかし,一般にハイフラックス膜での除去性能の向上は,同時に透析膜からのアルブミン漏出を引き起こすことが懸念されている。そこで今回,最近開発されたアルブミン漏出を極力抑えたPS膜を用い,対象としてアルブミン漏出が少なくかつ生体適合性が良いことで用いられているethylenvinylalcohol (EVAL) 膜とを,6か月間ずつ連続使用して膜素材の違いが透析患者の血清総蛋白値,アルブミン値に与える影響を比較検討した。PS膜はEVAL膜に比べて各溶質の除去率は有意に高く,血清総蛋白値も有意に増加した。血清アルブミン値および血清アルブミン変化率は,PS膜では増加傾向を示したがEVAL膜では低下傾向が見られた。よって今回認められた血清総蛋白値および血清アルブミン値の変化の差異は,膜の溶質除去性能の差異に由来しているのではないかと考えられた。このことから特に低蛋白血症の透析患者にはアルブミン漏出を極力抑え,高い尿毒症性物質の除去性能を持つ膜素材の選択は必要であると考えられた。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.58.13