九州で最後に捕獲されたツキノワグマの起源

九州ではツキノワグマ(Ursus thibetanus)は,1987年に大分県で捕獲されたのを最後に捕獲および生息を示す確実な根拠はなく,現在では絶滅したと考えられている.1987年に捕獲された個体については,野生個体であるとされているが,他地域から移入された個体の可能性も指摘されている.今回,この個体の由来を明らかにすることを目的として,ミトコンドリアDNA解析を行った.調節領域704塩基の配列を決定し,すでに発表されている系統地理学的研究の結果と比較したところ,同個体のハプロタイプは福井県嶺北地方から岐阜県西部にかけて分布しているものと同一だった.このことから,同個体は琵琶湖以東から九州へ...

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Published in哺乳類科学 Vol. 50; no. 2; pp. 177 - 180
Main Authors 大西, 尚樹, 安河内, 彦輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本哺乳類学会 2010
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Summary:九州ではツキノワグマ(Ursus thibetanus)は,1987年に大分県で捕獲されたのを最後に捕獲および生息を示す確実な根拠はなく,現在では絶滅したと考えられている.1987年に捕獲された個体については,野生個体であるとされているが,他地域から移入された個体の可能性も指摘されている.今回,この個体の由来を明らかにすることを目的として,ミトコンドリアDNA解析を行った.調節領域704塩基の配列を決定し,すでに発表されている系統地理学的研究の結果と比較したところ,同個体のハプロタイプは福井県嶺北地方から岐阜県西部にかけて分布しているものと同一だった.このことから,同個体は琵琶湖以東から九州へ移入された個体,もしくは移入されたメス個体の子孫であると結論づけられた.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.50.177