シカ類の研究と管理における現状と倫理的課題―米国獣医師会のガイドラインならびに国内事情

日本におけるシカ研究の材料の多くは,狩猟や個体数管理等を目的とする捕獲を通じ得られている.そのため現段階では,シカの研究利用に関わる倫理面での議論は,海外で提唱されている殺処分の一般的理念と照らし合わせつつ検討すべきと考えられる.米国獣医師会の「動物の安楽殺処分に関するガイドライン」では,野生動物に関するセクションが設けられている.このセクションでの記述で注目すべきは,「特定の状況における最も迅速で人道的な方法は,必ずしも既存の安楽殺処分の基準に合致しない」ならびに「現状で可能な最も良い方法が適用されねばならず,以前よりも優れた新しい技術と方法とが導入されなくてはならない」等の見解である.日本...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in哺乳類科学 Vol. 58; no. 2; pp. 283 - 287
Main Authors 鈴木, 正嗣, 松浦, 友紀子, 須藤, 明子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本哺乳類学会 2018
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:日本におけるシカ研究の材料の多くは,狩猟や個体数管理等を目的とする捕獲を通じ得られている.そのため現段階では,シカの研究利用に関わる倫理面での議論は,海外で提唱されている殺処分の一般的理念と照らし合わせつつ検討すべきと考えられる.米国獣医師会の「動物の安楽殺処分に関するガイドライン」では,野生動物に関するセクションが設けられている.このセクションでの記述で注目すべきは,「特定の状況における最も迅速で人道的な方法は,必ずしも既存の安楽殺処分の基準に合致しない」ならびに「現状で可能な最も良い方法が適用されねばならず,以前よりも優れた新しい技術と方法とが導入されなくてはならない」等の見解である.日本においても,海外のガイドラインや法令等を単に流用するのではなく,日本固有の社会情勢や制度,規制等に適合した最も人道的な手段や技術を検討・導入する姿勢が不可欠である.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.58.283