建築環境工学からみた文化財保存に及ぼす水分の影響

埋蔵文化財である住居跡や建物の柱穴などの土遺構に関して、その劣化と保存に水が及ぼす影響を建築環境工学の観点より述べた。平城宮跡遺構展示館の遺構を例として取り上げ、その劣化と周辺環境との関係に関して、劣化の現状、劣化原因、劣化のモデル化、劣化の進行予測、劣化対策の提案と評価について概説した。この展示館においては、土壌の侵食、塩類風化、蘚苔類の生育による汚損、懸濁状の褐色物質による汚損といった劣化現象がみられること、それらの劣化の主要な原因(劣化因子)は土壌を通して遺構面に流入する土壌水であること、塩類風化を抑制する方策としては遺構展示館の周囲の防水(排水)が最も効果的であること、換気などによる展...

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Published in日本生気象学会雑誌 Vol. 55; no. 1; pp. 3 - 8
Main Author 鉾井, 修一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生気象学会 01.06.2018
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ISSN0389-1313
1347-7617
DOI10.11227/seikisho.55.3

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Summary:埋蔵文化財である住居跡や建物の柱穴などの土遺構に関して、その劣化と保存に水が及ぼす影響を建築環境工学の観点より述べた。平城宮跡遺構展示館の遺構を例として取り上げ、その劣化と周辺環境との関係に関して、劣化の現状、劣化原因、劣化のモデル化、劣化の進行予測、劣化対策の提案と評価について概説した。この展示館においては、土壌の侵食、塩類風化、蘚苔類の生育による汚損、懸濁状の褐色物質による汚損といった劣化現象がみられること、それらの劣化の主要な原因(劣化因子)は土壌を通して遺構面に流入する土壌水であること、塩類風化を抑制する方策としては遺構展示館の周囲の防水(排水)が最も効果的であること、換気などによる展示館内部の温湿度の制御も有効であることを、熱水分の移動蓄積モデルを用いたシミュレーションにより例示した。
ISSN:0389-1313
1347-7617
DOI:10.11227/seikisho.55.3