脳静脈洞血栓症の診断後に耳漏を認め,原因として真珠腫性中耳炎が示唆された1例

要旨:症例は17歳・男性.急性発症の頭痛,嘔吐で搬送された.神経学的所見では,髄膜刺激症候,右外転神経麻痺を認めた.頭部CTで,右乳突蜂巣の発育不良,右横静脈洞から上矢状静脈洞に高吸収域を認めた.脳血管造影では,右S状静脈洞から描出はなく,上矢状静脈洞まで血栓が多発していた.以上より,脳静脈洞血栓症と診断した.血液凝固検査で血栓傾向を起こす原因は特定できなかった.しかし,入院後に右耳漏を認めたため,精査を行い,右真珠腫性中耳炎と診断した.脳静脈洞血栓症の原因として真珠腫性中耳炎が関与していると考え,治療を開始し,その後症状は消失したため,神経脱落症状なく退院した.脳静脈洞血栓症においては,頭部...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in脳卒中 Vol. 43; no. 1; pp. 47 - 51
Main Authors 植田, 良, 長田, 奈緒美, 布施, 彰久, 北薗, 久雄, 内, 孝文, 野崎, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2021
日本脳卒中学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.10773

Cover

More Information
Summary:要旨:症例は17歳・男性.急性発症の頭痛,嘔吐で搬送された.神経学的所見では,髄膜刺激症候,右外転神経麻痺を認めた.頭部CTで,右乳突蜂巣の発育不良,右横静脈洞から上矢状静脈洞に高吸収域を認めた.脳血管造影では,右S状静脈洞から描出はなく,上矢状静脈洞まで血栓が多発していた.以上より,脳静脈洞血栓症と診断した.血液凝固検査で血栓傾向を起こす原因は特定できなかった.しかし,入院後に右耳漏を認めたため,精査を行い,右真珠腫性中耳炎と診断した.脳静脈洞血栓症の原因として真珠腫性中耳炎が関与していると考え,治療を開始し,その後症状は消失したため,神経脱落症状なく退院した.脳静脈洞血栓症においては,頭部CTで乳突蜂巣の発育不良を認めたら,真珠腫性中耳炎が原因である可能性を考えるべきである.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.10773