Prevotella nigrescens由来exopolysaccharideの生物学的作用

Prevotella nigrescens (P. nigrescens)は, 歯周病患者の歯周ポケットから高頻度, 高比率に分離される歯周病原細菌である。P. nigrescensにはexopolysaccharide (EPS) を産生する株があり, EPS産生株をSEMで観察すると, 菌体間に網目状の構造物がみられ, biofilmを形成している。本研究では, EPSが歯周組織にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的に, 以下の実験を行った。(1) 歯根膜由来線維芽細胞 (PDL細胞) に歯周ポケット由来のEPS産生P. nigrescens strain 22, 23から...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 46; no. 2; pp. 143 - 151
Main Authors 山根, 一芳, 長澤, 成明, 池尾, 隆, 小幡, 登, 中村, 利央, 森, 直樹, 山中, 武志, 福島, 久典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 2004
日本歯周病学会
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Summary:Prevotella nigrescens (P. nigrescens)は, 歯周病患者の歯周ポケットから高頻度, 高比率に分離される歯周病原細菌である。P. nigrescensにはexopolysaccharide (EPS) を産生する株があり, EPS産生株をSEMで観察すると, 菌体間に網目状の構造物がみられ, biofilmを形成している。本研究では, EPSが歯周組織にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的に, 以下の実験を行った。(1) 歯根膜由来線維芽細胞 (PDL細胞) に歯周ポケット由来のEPS産生P. nigrescens strain 22, 23からそれぞれ分離精製したEPSを添加し, 細胞数, アルカリホスファターゼ活性 (ALP活性), cytokine産生誘導能を測定した。(2) ヒト末梢血単核細胞画分 (PBMCs) に1μg/mlの両EPSを添加し, 培養上清中のcytokine産生量を測定した。(3) PBMCsを両EPSとともに前培養後, LPSで刺激し, cytokine産生量の変化を検討した。結果, (1) 両EPSは, 50μg/mlの濃度でPDL細胞の増殖を抑制し, ALP活性を軽度に上昇させた。しかし1ないし100μg/mlのEPSはPDL細胞にIL-6, IL-8, GM-CSF産生を誘導しなかった。(2) 両EPSはPBMCsのIL-1β, IL-6, IL-8およびTNF-α産生を誘導しなかった。(3) 両EPSはPBMCsに対するLPSのIL-6, IL-8産生誘導を軽度に抑制した。 今回検討を行った範囲では, EPSにはほとんど生物学的活性が見られなかったことから, EPSのP. nigrescensの組織侵襲性に及ぼす影響は, 主にEPSが物理的バリアを形成し, 宿主の局所免疫応答による細菌の排除を回避することによって生じる可能性が示唆された。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.46.143