膵性胸水を伴った膵体部癌の1切除例

症例は62歳男性.検診の腹部超音波検査で主膵管の拡張と膵尾部の嚢胞性病変を指摘され,当院へ紹介された.当院初診時に呼吸苦と背部痛を認めた.胸部X線検査で多量の左胸水と縦隔の右方偏位を認め,腹部造影CT検査では膵体部に境界不明瞭な低吸収腫瘤,尾側膵管の拡張及び仮性嚢胞を認めた.左胸腔穿刺で茶褐色の胸水を認めた.胸水アミラーゼ値は26,775U/lと高値で,胸水細胞診はclass Iであった.内視鏡的逆行性膵管造影検査では膵体部での膵管閉塞を認め,同部位の生検で腺癌を疑う所見を認めた.以上より,膵体部癌に伴う膵性胸水と判断した.左胸腔ドレナージ,経鼻膵管ドレナージ,抗菌薬投与を行い,約3週間後に膵...

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Published in膵臓 Vol. 34; no. 2; pp. 106 - 113
Main Authors 蘆田, 良, 山本, 有祐, 宮本, 剛士, 大木, 克久, 佐々木, 恵子, 杉浦, 禎一, 上坂, 克彦, 岡村, 行泰, 伊藤, 貴明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.04.2019
Subjects
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.34.106

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Summary:症例は62歳男性.検診の腹部超音波検査で主膵管の拡張と膵尾部の嚢胞性病変を指摘され,当院へ紹介された.当院初診時に呼吸苦と背部痛を認めた.胸部X線検査で多量の左胸水と縦隔の右方偏位を認め,腹部造影CT検査では膵体部に境界不明瞭な低吸収腫瘤,尾側膵管の拡張及び仮性嚢胞を認めた.左胸腔穿刺で茶褐色の胸水を認めた.胸水アミラーゼ値は26,775U/lと高値で,胸水細胞診はclass Iであった.内視鏡的逆行性膵管造影検査では膵体部での膵管閉塞を認め,同部位の生検で腺癌を疑う所見を認めた.以上より,膵体部癌に伴う膵性胸水と判断した.左胸腔ドレナージ,経鼻膵管ドレナージ,抗菌薬投与を行い,約3週間後に膵頭十二指腸切除術を施行した.術後経過は良好で第18病日に退院となった.膵性胸水は慢性膵炎に併発することが多いとされるが,膵癌に膵性胸水を併発した報告は稀であるので文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.34.106