閉鎖循環下抗癌剤灌流療法の開発と臨床評価

骨盤内進行性悪性腫瘍および骨盤内再発症例に対しては全身化学療法や動脈内注入療法が広く行われている. これらの方法では投与された抗癌剤が静脈から全身へと循環するため, 副作用の点から投与量を自ずと少なくせざるを得ない. 殆どの抗癌剤は投与量と治療効果が相関するため, 治療効果を上げるためには第1に投与量を増加させ, 第2に投与時間を増加させるのが理想である. これらの問題点を克服するために, 「閉鎖循環下骨盤内抗癌剤灌流療法(Isolated Pelvic Perfusion)」が考案された. この療法は放射線科的処置(血管造影の技術)と外科的処置により大動脈, 下大静脈をバルーンカテーテルを用...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 69; no. 5; pp. 468 - 470
Main Authors 村田, 智, 田島, 廣之, 隈崎, 達夫, 大井, 良之, 近藤, 幸尋, 阿部, 豊, 駒田, 康成, 古川, 一博, パスカル, ニゲマン, 宮下, 次廣, 高崎, 秀明, 木全, 亮二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2002
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Summary:骨盤内進行性悪性腫瘍および骨盤内再発症例に対しては全身化学療法や動脈内注入療法が広く行われている. これらの方法では投与された抗癌剤が静脈から全身へと循環するため, 副作用の点から投与量を自ずと少なくせざるを得ない. 殆どの抗癌剤は投与量と治療効果が相関するため, 治療効果を上げるためには第1に投与量を増加させ, 第2に投与時間を増加させるのが理想である. これらの問題点を克服するために, 「閉鎖循環下骨盤内抗癌剤灌流療法(Isolated Pelvic Perfusion)」が考案された. この療法は放射線科的処置(血管造影の技術)と外科的処置により大動脈, 下大静脈をバルーンカテーテルを用いて一時的に閉塞し, 同時にタニケットにより下肢の血流を一時的に遮断, 骨盤部の血流を遮断して同部に抗癌剤を注入, 吸引し, 骨盤内の抗癌剤濃度を高く保ち骨盤外への抗癌剤の漏出を出来うる限り抑える方法である. 閉鎖循環下骨盤内抗癌剤灌流療法の歴史と問題点 閉鎖循環下骨盤内抗癌剤灌流療法は, 1958年にGreechが通常の全身化学療法より高濃度の抗癌剤を患部に注入できるとして, その原型となる灌流療法を報告したことに始まる. ところがこの灌流療法は欧米の一部のCanCer Centerで行われているだけで, 一般には普及しなかった. その理由として, この方法には2つの大きな欠点が存在するためである. 一つは骨盤内には発達した側副血行路が存在するため灌流10分程度で約40%の抗癌剤が全身系へ漏出してしまう. 二つ目は灌流療法終了後に骨盤内に存在する抗癌剤を除去する手段がないため最終的には全投与量の抗癌剤が全身系へ流入するため通常量の抗癌剤しか使用できないことである.
ISSN:1345-4676
1347-3409
DOI:10.1272/jnms.69.468