CT enteroclysisが内瘻の診断に有用であったクローン病の1例

CT enteroclysis(CTE)とは,水や等張性緩下剤等(Niflec®,Elental®等)の陰性造影剤を小腸チューブから注入し,全小腸を十分に拡張させた後Dynamic CTを撮影して小腸病変の診断を行う検査法である.海外ではクローン病に対する報告が多数なされており,腸管の炎症,狭窄や瘻孔に対して高い確率での検出が可能とされている.症例は30歳代男性.2006年に小腸大腸型クローン病と診断され,5-アミノサリチルサン(5-ASA)製剤内服と成分栄養剤で加療されていた.2008年,臀部痛が出現し,近医の造影CTで仙骨前面に膿瘍を認めたが保存的加療にて症状は軽快し,以後の受診歴はない....

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Published in山口医学 Vol. 60; no. 5; pp. 185 - 190
Main Authors 柴田, 大明, 橋本, 真一, 松永, 尚治, 田邉, 亮, 清水, 建策, 松隈, 聰, 硲, 彰一, 岡, 正朗, 坂井田, 功
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2011
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Summary:CT enteroclysis(CTE)とは,水や等張性緩下剤等(Niflec®,Elental®等)の陰性造影剤を小腸チューブから注入し,全小腸を十分に拡張させた後Dynamic CTを撮影して小腸病変の診断を行う検査法である.海外ではクローン病に対する報告が多数なされており,腸管の炎症,狭窄や瘻孔に対して高い確率での検出が可能とされている.症例は30歳代男性.2006年に小腸大腸型クローン病と診断され,5-アミノサリチルサン(5-ASA)製剤内服と成分栄養剤で加療されていた.2008年,臀部痛が出現し,近医の造影CTで仙骨前面に膿瘍を認めたが保存的加療にて症状は軽快し,以後の受診歴はない.2009年4月,鮮血便を頻回に認め,上部・下部消化管内視鏡検査では出血源が同定されなかったことから小腸出血が疑われた.出血は絶食のみで自然止血したが,出血源の同定目的で当院へ転院となった.陰性造影剤としてNiflec®を用いてCTEを施行したところ,回腸の壁肥厚,狭窄および直腸との内瘻の形成が疑われ手術適応と判断し,当院外科で手術が行われた.術中所見でCTEにて検出された回腸直腸瘻が実際に確認された.従来クローン病における内瘻の診断には小腸X線造影検査が用いられてきたが,瘻孔を明確に描出するのは難しく,術中所見ではじめて瘻孔形成部位が確定することも少なくなかった.本症例では内瘻の存在および局在の同定にCTEが安全に実施でき,手術適応を判断する上で有用であったことから,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.60.185