Lactoferrinはヒト歯肉線維芽細胞において細胞増殖と創傷治癒を促進する―in vitro研究

歯周病はグラム陰性嫌気性菌による炎症性疾患であり,細菌感染と生体防御の均衡の破綻により病状が進展する。Lactoferrinは分子量約80 kDaの多機能性を有する鉄結合性糖タンパク質であり,歯周病原細菌に対する抗菌作用やバイオフィルム形成抑制作用などが知られているが,歯周組織への直接的な作用については不明な点が多い。本研究では,ヒト歯肉線維芽細胞(HGFs)を対象にLactoferrinが及ぼすin vitroの影響について検討を行った。DNAマイクロアレイ解析から,Lactoferrinは細胞の発生,形態形成,代謝,生合成,遊走に関連する遺伝子群の発現変動に寄与していた。また,HGFsには...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 61; no. 1; pp. 18 - 27
Main Author 鈴木, 苗穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 29.03.2019
日本歯周病学会
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.61.18

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Summary:歯周病はグラム陰性嫌気性菌による炎症性疾患であり,細菌感染と生体防御の均衡の破綻により病状が進展する。Lactoferrinは分子量約80 kDaの多機能性を有する鉄結合性糖タンパク質であり,歯周病原細菌に対する抗菌作用やバイオフィルム形成抑制作用などが知られているが,歯周組織への直接的な作用については不明な点が多い。本研究では,ヒト歯肉線維芽細胞(HGFs)を対象にLactoferrinが及ぼすin vitroの影響について検討を行った。DNAマイクロアレイ解析から,Lactoferrinは細胞の発生,形態形成,代謝,生合成,遊走に関連する遺伝子群の発現変動に寄与していた。また,HGFsにはLactoferrinの受容体であるlow density lipoprotein(LDL)receptor-related protein 1(LRP1)が発現しており,LactoferrinによってHGFsの細胞増殖能と創傷治癒が促進された。さらに,Lactoferrinがextracellular signal-related kinase 1/2(ERK1/2)のリン酸化を促進した。以上のことから,LactoferrinはHGFsにおいてERK1/2を活性化し,細胞増殖や創傷治癒を亢進させる機能を有し,歯周組織構成細胞である歯肉線維芽細胞の組織修復機能を強化する有用な素材であると考えられる。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.61.18