低月齢乳児の単純性上部尿路感染症に続発した一過性Fanconi症候群

生後3か月未満の低月齢乳児における上部尿路感染症単独・先天性腎尿路異常単独・これらの合併に伴う一過性偽性低アルドステロン症(pseudo-hypoaldosteronism type III, PHA III型)は多数報告されている。その多くが重症の低ナトリウム血症と高カリウム血症を伴い生命の危急事態で発症する。今回,低月齢乳児の単純性上部尿路感染症に続発した,一過性Fanconi症候群(Fanconi Syndrome, FS)を経験した。生後28日の21トリソミーの児が,画像精査で尿路異常を伴わない初めての上部尿路感染症に罹患した。抗菌薬投与による速やかな解熱にも関わらず活気不良が遷延し,...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 51; no. 2; pp. 57 - 63
Main Authors 吉村, 博, 中野, 茉莉恵, 森内, 美希, 清水, 直樹, 大串, 健一郎, 廣瀬, あかね, 白土, 允
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2023
聖マリアンナ医科大学医学会
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ISSN0387-2289
2189-0285
DOI10.14963/stmari.51.57

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Summary:生後3か月未満の低月齢乳児における上部尿路感染症単独・先天性腎尿路異常単独・これらの合併に伴う一過性偽性低アルドステロン症(pseudo-hypoaldosteronism type III, PHA III型)は多数報告されている。その多くが重症の低ナトリウム血症と高カリウム血症を伴い生命の危急事態で発症する。今回,低月齢乳児の単純性上部尿路感染症に続発した,一過性Fanconi症候群(Fanconi Syndrome, FS)を経験した。生後28日の21トリソミーの児が,画像精査で尿路異常を伴わない初めての上部尿路感染症に罹患した。抗菌薬投与による速やかな解熱にも関わらず活気不良が遷延し,精査により,尿細管障害が近位尿細管に限局した(PHA III型や遠位尿細管機能障害は伴わない)FSと診断した。アルカリとカリウムの短期補充で全身状態は速やかに改善したが,近位尿細管機能の完全回復には2か月を要した。低月齢児の上部尿路感染症には近位尿細管に限局した一過性の尿細管機能異常を合併する可能性があり,感染症治癒後もその機能回復が遷延する可能性がある。低月齢乳児の上部尿路感染症において,適切な抗菌薬投与が開始され解熱が得られたにもかかわらず全身状態の回復遅延が認められた場合は本病態を考慮すべきであり,近位尿細管機能回復を注意深く経過観察すべきである。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.51.57