中枢神経系疾患患者に対する運動療法技術の発展

私が理学療法士として仕事に就いた当時は理学療法プログラムとその技術について, 全面的に担当医から指示と指導を仰いだ. その時は, 担当医から指導された手段をいかに忠実に実現できるかを目標に技術の向上に努めた. やがて指導者である専門医といえども試行錯誤を繰り返し悩まされている対象者がいる事が判った. その対象者は脳性麻痺児を代表とする脳障害疾患患者達であった. 当時は彼らに対して, もはや医学的治療の終了者あるいは医療の対象外と考えられていたのが, 大勢であった. 一方, 彼らに対しても早期発見・早期治療による医学的成果を目指しているパイオニアの存在も知った. 仕事のパートナーであった医師達と...

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Published in理学療法学 Vol. 22; no. 6; pp. 336 - 340
Main Author 紀伊, 克昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 30.11.1995
日本理学療法士協会
Japanese Society of Physical Therapy
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.KJ00001307558

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Summary:私が理学療法士として仕事に就いた当時は理学療法プログラムとその技術について, 全面的に担当医から指示と指導を仰いだ. その時は, 担当医から指導された手段をいかに忠実に実現できるかを目標に技術の向上に努めた. やがて指導者である専門医といえども試行錯誤を繰り返し悩まされている対象者がいる事が判った. その対象者は脳性麻痺児を代表とする脳障害疾患患者達であった. 当時は彼らに対して, もはや医学的治療の終了者あるいは医療の対象外と考えられていたのが, 大勢であった. 一方, 彼らに対しても早期発見・早期治療による医学的成果を目指しているパイオニアの存在も知った. 仕事のパートナーであった医師達とともに, そうしたパイオニア的な手段を, 国の内外に求めた. その経過から私はBobathに巡りあった. そして中枢神経疾患の治療に本格的に取り組みだしてから25年の月日が経過した. 彼らが提唱した神経発達学的治療(NDT)の考え方と具体的技術とその治療成績については, 私および同僚たちによって, 学会・誌上・講習会等で広く紹介してきた. NDTそのものは実践者の創意工夫によって, また概念と技術は外部要因即ち脳科学の進歩および対象者の社会的ニードによって, 私が初めて接した時とは, 大きく変貌している. 古典的ボバース法とさえ表現される部分もある. その後もいくつかの上級講習会を受けたり文献を読んだり, 国内外の同僚達と相互研讃を重ねながら, 臨床の場で最善の方法を模索してきた.
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.KJ00001307558