選択可能性が不安反応に及ぼす効果の検討

自らが選択決定できるということが,不安を増大したり低減するという矛盾した効果をもつと報告されている。本研究では,設定された3つの確率条件からひとつを被験者自身が選択できる群と実験者により指定される群とに分け,条件や個人特性(1-E)との適合性もあわせ,選択決定の前後の時相にみられる心拍変化を手掛りに選択可能性の検討を行うことを目的とした。結果は以下の通りであった。(1)選択ができる場合では,選択決定前の不安が高く選択後の不安が低減されるが,できない場合では逆のパターンを示し,指定後の不安が高いことがわかった。これまでの矛盾した報告は,扱っていた時相が異なっていたためであり,時系列としてみること...

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Published in行動療法研究 Vol. 11; no. 1; pp. 14 - 22
Main Authors 生和, 秀敏, 岩永, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本認知・行動療法学会 30.09.1985
日本行動療法学会
Subjects
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ISSN0910-6529
2424-2594
DOI10.24468/jjbt.11.1_14

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Abstract 自らが選択決定できるということが,不安を増大したり低減するという矛盾した効果をもつと報告されている。本研究では,設定された3つの確率条件からひとつを被験者自身が選択できる群と実験者により指定される群とに分け,条件や個人特性(1-E)との適合性もあわせ,選択決定の前後の時相にみられる心拍変化を手掛りに選択可能性の検討を行うことを目的とした。結果は以下の通りであった。(1)選択ができる場合では,選択決定前の不安が高く選択後の不安が低減されるが,できない場合では逆のパターンを示し,指定後の不安が高いことがわかった。これまでの矛盾した報告は,扱っていた時相が異なっていたためであり,時系列としてみることで,選択可能性のもつ不安増大・低減効果がより明確になった。(2)条件や個人特性との適合性に関していうと,適合性がよいと不安が低減されることがわかったが,選択可能性ほどその効果は強くない。
AbstractList 自らが選択決定できるということが,不安を増大したり低減するという矛盾した効果をもつと報告されている。本研究では,設定された3つの確率条件からひとつを被験者自身が選択できる群と実験者により指定される群とに分け,条件や個人特性(1-E)との適合性もあわせ,選択決定の前後の時相にみられる心拍変化を手掛りに選択可能性の検討を行うことを目的とした。結果は以下の通りであった。(1)選択ができる場合では,選択決定前の不安が高く選択後の不安が低減されるが,できない場合では逆のパターンを示し,指定後の不安が高いことがわかった。これまでの矛盾した報告は,扱っていた時相が異なっていたためであり,時系列としてみることで,選択可能性のもつ不安増大・低減効果がより明確になった。(2)条件や個人特性との適合性に関していうと,適合性がよいと不安が低減されることがわかったが,選択可能性ほどその効果は強くない。
自らが選択決定できるということが, 不安を増大したり低減するという矛盾した効果をもつと報告されている. 本研究では, 設定された3つの確率条件からひとつを被験者自身が選択できる群と実験者により指定される群とに分け, 条件や個人特性(I-E)との適合性もあわせ, 選択決定の前後の時相にみられる心拍変化を手掛りに選択可能性の検討を行うことを目的とした. 結果は以下の通りであった. (1)選択ができる場合では, 選択決定前の不安が高く選択後の不安が低減されるが, できない場合では逆のパターンを示し, 指定後の不安が高いことがわかった. これまでの矛盾した報告は, 扱っていた時相が異なっていたためであり, 時系列としてみることで, 選択可能性のもつ不安増大・低減効果がより明確になった. (2)条件や個人特性との適合性に関していうと, 適合性がよいと不安が低減されることがわかったが, 選択可能性ほどその効果は強くない.「序言」Dollard, J. & Miller, N.E.(1950)は, 不安を葛藤の関数であると述べ, 特に回避動因を含む葛藤状況こそ不安発生のモデル事態であると考えている.
Author 生和, 秀敏
岩永, 誠
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SubjectTerms locus of control
心拍パターン
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選択可能性
Title 選択可能性が不安反応に及ぼす効果の検討
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