ステロイド投与が誘因になったと考えられるPaget-Schroetter症候群の1例

症例は34歳の男性. 主訴は左上肢の浮腫と疼痛である. 気管支喘息でステロイド治療を受けた約2週間後, 起床時に左前腕の疼痛と浮腫に気づき, 当院を受診した. 胸部造影CTで左腋窩静脈から鎖骨下静脈にかけて血栓像が認められた. 明らかな血栓性素因なく, 胸郭出口領域に先進部のある血栓を認めたことからPaget-Schroetter症候群と診断した. へパリンの持続静脈投与とワルファリンの内服を開始し, ウロキナーゼによる血栓溶解療法も行った. 第3病日には右上肢の浮腫, 疼痛の改善がみられた. 第12病日に施行した血管エコー検査では血栓の退縮を認めたが, 鎖骨下静脈の閉塞は改善されなかった....

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Published inShinzo Vol. 46; no. 11; pp. 1499 - 1504
Main Authors 冠木, 敬之, 福永, 俊二, 池田, 隆徳, 久武, 真二, 橋本, 英伸, 山崎, 純一, 原, 文彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2014
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.46.1499

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Summary:症例は34歳の男性. 主訴は左上肢の浮腫と疼痛である. 気管支喘息でステロイド治療を受けた約2週間後, 起床時に左前腕の疼痛と浮腫に気づき, 当院を受診した. 胸部造影CTで左腋窩静脈から鎖骨下静脈にかけて血栓像が認められた. 明らかな血栓性素因なく, 胸郭出口領域に先進部のある血栓を認めたことからPaget-Schroetter症候群と診断した. へパリンの持続静脈投与とワルファリンの内服を開始し, ウロキナーゼによる血栓溶解療法も行った. 第3病日には右上肢の浮腫, 疼痛の改善がみられた. 第12病日に施行した血管エコー検査では血栓の退縮を認めたが, 鎖骨下静脈の閉塞は改善されなかった. しかし, 側副血行路の発達に伴い, 自覚症状が改善したため退院とした. 現在もワルファリンの内服を継続している. 本症は肺血栓塞栓症を発症することも稀でなく, 時に致死的であり, また長期の経過で再発を起こすこともある. 原因不明の上肢腫脹をきたした症例においては, 本症を鑑別疾患の1つとして考慮し, 適切な診断と注意深い経過観察が必要である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.46.1499