セルロースナノファイバーを添加したポリプロピレン系コンポジットの熱促進過程変化

近年開発が進められているセルロースナノファイバー(CNF)は,多くの分野で注目されている材料であり,ポリプロピレン(PP)/CNFコンポジットとして実用化を目指して開発されつつある.しかし,実用化で必要とされるPP/CNFコンポジットの結晶構造や保存性に関する研究はほとんど報告されていない.そこで,筆者らは,PP/CNFコンポジットの100°C熱促進過程におけるPPの高次構造に関する変化,およびCNFの影響を分析し,以下の知見を得た.第一に,CNFは,β晶の形成,結晶および配向を抑制する.一方CNFは,分子配向下でのPPのβ晶成長を抑制するが,100°C下でのPPのβ晶成長を抑制しない.また,...

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Published in高分子論文集 Vol. 75; no. 6; pp. 588 - 596
Main Authors 岡田, きよみ, 大嶋, 正裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 25.11.2018
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ISSN0386-2186
1881-5685
DOI10.1295/koron.2018-0011

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Summary:近年開発が進められているセルロースナノファイバー(CNF)は,多くの分野で注目されている材料であり,ポリプロピレン(PP)/CNFコンポジットとして実用化を目指して開発されつつある.しかし,実用化で必要とされるPP/CNFコンポジットの結晶構造や保存性に関する研究はほとんど報告されていない.そこで,筆者らは,PP/CNFコンポジットの100°C熱促進過程におけるPPの高次構造に関する変化,およびCNFの影響を分析し,以下の知見を得た.第一に,CNFは,β晶の形成,結晶および配向を抑制する.一方CNFは,分子配向下でのPPのβ晶成長を抑制するが,100°C下でのPPのβ晶成長を抑制しない.また,CNFは,結晶成長および結晶サイズの増大を抑制し,融解,結晶化におけるOn set値を上昇させる.そして,熱促進過程では,融解におけるOn set値変化を抑制し,結晶を微細なサイズ状態に保持する.第二に,PP/CNFは,熱酸化劣化後も形状が安定しており,熱促進安定性が高い.第三に,力学強度において,CNFは伸長を制限し,降伏応力を大きくする.本研究は,PP成形体の高次構造変化およびPP/CNF成形体におけるCNFの機能を明確にしている.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.2018-0011