グリア細胞及びATP受容体を標的としたアカデミア創薬の実現に向けた「グリーンファルマ研究」の取り組み

「1. はじめに」 神経障害性疼痛は, がんや糖尿病, 帯状疱疹などの疾患や外科的手術に伴う, 神経の損傷や機能異常により引き起こされる難治性の慢性疼痛である. これは本来痛みとして感じない触刺激を激烈な痛みと感じてしまうアロディニアを主症状とする. しかしながら, 既存の鎮痛薬で十分な効果を得られている患者はわずか4人に1人という現状であることから, 神経障害性疼痛に対する新たな治療薬の探索及び開発は急務の課題である. 末梢神経を損傷させた神経障害性疼痛モデル動物の脊髄において, 中枢の免疫担当細胞であるミクログリアは肥大化や突起の退縮などの形態学的変化及び機能分子の発現変化を伴い, 神経障...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 138; no. 8; pp. 1027 - 1031
Main Authors 井上, 和秀, 津田, 誠, 齊藤, 秀俊, 山下, 智大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.08.2018
日本薬学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.17-00211-1

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」 神経障害性疼痛は, がんや糖尿病, 帯状疱疹などの疾患や外科的手術に伴う, 神経の損傷や機能異常により引き起こされる難治性の慢性疼痛である. これは本来痛みとして感じない触刺激を激烈な痛みと感じてしまうアロディニアを主症状とする. しかしながら, 既存の鎮痛薬で十分な効果を得られている患者はわずか4人に1人という現状であることから, 神経障害性疼痛に対する新たな治療薬の探索及び開発は急務の課題である. 末梢神経を損傷させた神経障害性疼痛モデル動物の脊髄において, 中枢の免疫担当細胞であるミクログリアは肥大化や突起の退縮などの形態学的変化及び機能分子の発現変化を伴い, 神経障害性疼痛に大きく寄与することが明らかになっている. 筆者らは脊髄ミクログリアに著しく発現増加するP2×4受容体(イオンチャネル型ATP受容体)を特定し, P2×4受容体の機能を阻害することでアロディニア症状を寛解することを明らかにしている.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.17-00211-1