法科学分野における毛髪中の薬物鑑定

「1. はじめに」 毛髪中薬物の鑑定は, 1990年代から, 犯罪の立証や供述の裏付けなど法科学の分野で広く活用されてきた. 毛髪は, 他の生体試料(尿や血液)と比較して薬物の検出可能期間が長いうえに, 摂取歴の証明(摂取時期の特定, 単回/複数回摂取の識別など)が可能な唯一の試料として鑑定に供される. 実際の鑑定で対象となる化合物は, 乱用薬物や睡眠薬が大半を占め, 前者は主に被疑者の薬物常習性を証明するために, 後者は主に被害者の薬物摂取や摂取時期を証明するために鑑定が行われる. 毛髪は, 毛球部(Hair bulb)にある毛母細胞(Hair matrix cell)の細胞分裂によって発生...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 139; no. 5; pp. 705 - 713
Main Authors 志摩, 典明, 佐々木, 啓子, 鎌田, 徹, 三木, 昭宏, 片木, 宗弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.05.2019
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」 毛髪中薬物の鑑定は, 1990年代から, 犯罪の立証や供述の裏付けなど法科学の分野で広く活用されてきた. 毛髪は, 他の生体試料(尿や血液)と比較して薬物の検出可能期間が長いうえに, 摂取歴の証明(摂取時期の特定, 単回/複数回摂取の識別など)が可能な唯一の試料として鑑定に供される. 実際の鑑定で対象となる化合物は, 乱用薬物や睡眠薬が大半を占め, 前者は主に被疑者の薬物常習性を証明するために, 後者は主に被害者の薬物摂取や摂取時期を証明するために鑑定が行われる. 毛髪は, 毛球部(Hair bulb)にある毛母細胞(Hair matrix cell)の細胞分裂によって発生し, 角化しながら頭皮の方へと押し上げられて1ヵ月に平均1.0-1.5cmの速度で伸長する.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.18-00166-4