丸山論文に対するEditorial Comment
これまで, 良性の所見の1つとされていた早期再分極であったが, 近年ではQRS波終末のJ波が心室細動や突然死へ密接に関与していることが報告され, 早期再分極(J波)症候群として知られるようになった. 症例の約80%弱は男性で診断年齢は40歳前後とされ, 本症例にも合致する. 本症例では広範囲の誘導でJ波を認めAntzelevitchらの分類1)でタイプ3に近いが, Brugada様のcoved型にも類似した変化も認めた. 一方, Brugada症候群においても心室細動発作後の心電図でcoved型波形の変化を認めることがある. この変化が心室細動を引き起こした原因なのか, 心室細動の結果として生...
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Published in | Shinzo Vol. 48; no. 2; p. 173 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2016
日本心臓財団・日本循環器学会 Japan Heart Foundation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.48.173 |
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Summary: | これまで, 良性の所見の1つとされていた早期再分極であったが, 近年ではQRS波終末のJ波が心室細動や突然死へ密接に関与していることが報告され, 早期再分極(J波)症候群として知られるようになった. 症例の約80%弱は男性で診断年齢は40歳前後とされ, 本症例にも合致する. 本症例では広範囲の誘導でJ波を認めAntzelevitchらの分類1)でタイプ3に近いが, Brugada様のcoved型にも類似した変化も認めた. 一方, Brugada症候群においても心室細動発作後の心電図でcoved型波形の変化を認めることがある. この変化が心室細動を引き起こした原因なのか, 心室細動の結果として生じた変化なのか, 定説はなく, 本症例の再入院時の変化も心室細動の結果として電気的変化を生じていた可能性も否定できない. このように症例によって厳密に分類可能なのではなく, J波自体も自律神経等による修飾2)の影響などによって変化し, 早期再分極(J波)症候群であればいずれの誘導にもJ波を生じうる可能性もあり, これらはオーバーラップしていることも考えられる. 丸山論文で考察されているように, 早期再分極(J波)症候群を疑った時点でピルジカイニド負荷を行い, Brugada様のcoved型変化の出現の有無をチェックすることも, 今後検討すべきと思われる. 再発予防にはキニジンの有効性が報告されているが確実ではない. 本症例でも注意深く観察されているように, 副作用の発現に留意したうえで, 植込み型除細動器の植込みが必須となる. 再発二次予防に対する植込み型除細動器の植込みは異論がないところであるが, 無症候例に対する一次予防として植込み型除細動器の植込みについては判断が難しい問題である. 本症例でも2010年の検診心電図から早期再分極(J波)症候群が疑われ, 既往や家族歴がないにもかかわらず2013年の初回発作時に救急隊のAED使用にて救命されている. 早期再分極(J波)症候群を疑った時点で初回発作時に致死的となる可能性を強く認識すべきであると, 本論文は警笛をならしたといえよう. 文献 1)Antzelevitch C, Yan GX: J wave syndromes. Heart Rhythm 2010;7:549-558 2)Miyazaki H, Nakagawa M, Shin Y, et al; Comparison of autonomic J-wave modulation in patients with idiopathic ventricular fibrillation and control subjects. Circ J 2013; 77:330-337 |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.48.173 |