大動脈弁置換術中に僧帽弁収縮期前方運動を認めた大動脈弁狭窄症の1例
症例は,74歳,女性.大動脈弁狭窄(aortic stenosis;AS)の既往あり.労作時胸痛を主訴に当科外来を受診した.経胸壁心エコー検査で6年前と比較しASの進行を認めた(大動脈弁通過最高血流速度,2.7 m/s→4.0 m/s).またS字状中隔も認めていた.冠動脈造影検査では右冠動脈遠位部の有意狭窄を認めた.冠動脈狭窄を合併する高度ASに対し大動脈弁置換術および冠動脈バイパス術が施行された.手術は順調に経過していたが人工心肺離脱時に突然,橈骨動脈圧の低下と肺動脈圧の上昇を認めた.術中モニターしていた経食道心エコー検査で,僧帽弁前尖の収縮期前方運動(systolic anterior m...
Saved in:
Published in | Shinzo Vol. 49; no. 8; pp. 843 - 847 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.08.2017
日本心臓財団・日本循環器学会 Japan Heart Foundation |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.49.843 |
Cover
Summary: | 症例は,74歳,女性.大動脈弁狭窄(aortic stenosis;AS)の既往あり.労作時胸痛を主訴に当科外来を受診した.経胸壁心エコー検査で6年前と比較しASの進行を認めた(大動脈弁通過最高血流速度,2.7 m/s→4.0 m/s).またS字状中隔も認めていた.冠動脈造影検査では右冠動脈遠位部の有意狭窄を認めた.冠動脈狭窄を合併する高度ASに対し大動脈弁置換術および冠動脈バイパス術が施行された.手術は順調に経過していたが人工心肺離脱時に突然,橈骨動脈圧の低下と肺動脈圧の上昇を認めた.術中モニターしていた経食道心エコー検査で,僧帽弁前尖の収縮期前方運動(systolic anterior motion;SAM)の出現により,左室流出路の加速血流と高度僧帽弁逆流が惹起されていることが判明した.カテコラミンの中止および容量負荷によりSAMは消失し僧帽弁逆流も改善した.術直後に心不全を併発したが,以後良好に経過し術後第25日目に退院した.本症例では術前より認めていたS字状中隔が,術中の循環動態の変化に伴うSAMの出現に影響したと考えられた.術中の経食道心エコー検査は急激な血行動態の変化に対するリアルタイムな原因精査に有用であった. |
---|---|
ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.49.843 |