急性心筋梗塞後心室中隔穿孔の修復術後の遺残短絡に対して待機的に再修復した1例

急性心筋梗塞後心室中隔穿孔 (ventricular septal perforation ; VSP) に対する修復術後の遺残短絡は生命予後を左右する重要な因子である. 今回, 顕著な遺残短絡に対して保存的に急性期管理を行い, 全身状態および心機能の安定後に遺残短絡の閉鎖を行った症例を報告する. 症例は60歳, 男性. 前立腺癌の手術翌日に急性心筋梗塞 (acute myocardial infarction ; AMI) を発症し, 1週間後にVSPの合併を認め当院へ救急搬送となった. 経胸壁心エコーで前壁中隔梗塞所見とVSPを認め, 緊急心臓カテーテル検査で左前下行枝の完全閉塞とQp/Q...

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Published inShinzo Vol. 47; no. 5; pp. 591 - 594
Main Authors 申, 範圭, 森, 光晴, 高木, 秀暢, 高橋, 辰郎, 平野, 暁教
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2015
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.47.591

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Summary:急性心筋梗塞後心室中隔穿孔 (ventricular septal perforation ; VSP) に対する修復術後の遺残短絡は生命予後を左右する重要な因子である. 今回, 顕著な遺残短絡に対して保存的に急性期管理を行い, 全身状態および心機能の安定後に遺残短絡の閉鎖を行った症例を報告する. 症例は60歳, 男性. 前立腺癌の手術翌日に急性心筋梗塞 (acute myocardial infarction ; AMI) を発症し, 1週間後にVSPの合併を認め当院へ救急搬送となった. 経胸壁心エコーで前壁中隔梗塞所見とVSPを認め, 緊急心臓カテーテル検査で左前下行枝の完全閉塞とQp/Qs=2.1の左右短絡を確認し, 同日緊急手術を施行した. 手術は静脈グラフトによる左前下行枝へのバイパス術を行い, VSPに対しては牛心膜パッチによるVSPのパッチ閉鎖術とInfarct exclusion法を組み合わせた2重パッチ法で修復した. 術後遺残短絡が経時的に増大したが, 術中所見による前乳頭筋基部を含む広範囲の梗塞心筋の脆弱性から急性期の修復は困難であると判断し, 急性期は大動脈内バルーンパンピングと薬物による血行動態の安定化と心不全コントロールを行い, 初回手術から2カ月後に再手術を行った. 再手術時には心筋梗塞部は瘢痕化しておりVSP閉鎖は容易であった. 術中および術後心エコーで遺残短絡はなく, 患者は合併症なくNYHAⅠ度で再手術後33病日に退院し状態は安定している. VSP術後遺残短絡に対して保存療法で血行動態の安定化が可能な症例では, 早期再手術ではなく梗塞心筋の瘢痕化の時期まで待機することも選択肢になると考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.47.591