嚥下障害が疑われた総合病院入院高齢者における舌口唇運動機能と栄養リスクおよび食形態との関連性

【背景】舌や口唇の機能低下は,食塊形成不全を生じ,摂取できる食事が限定され,低栄養につながるとされているが,その関連性について報告したものは少ない.本研究では,総合病院入院高齢者において,舌口唇運動機能の低下と低栄養,ならびに食形態レベルの低下との関連について調査を行った.【方法】対象は,総合病院歯科口腔外科に嚥下機能評価のために紹介され経口摂取をしており,舌口唇運動機能検査が可能であった65 歳以上の入院患者259 名(男性135 名,平均年齢84.4±8.0 歳)とした.Geriatric Nutritional Risk Index を用いて,栄養リスク高度群と中等度・軽度・群の2 群に...

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Published in日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 27; no. 2; pp. 117 - 127
Main Authors 重本, 心平, 堀, 一浩, 高橋, 順子, 大川, 純平, 小野, 高裕, 宮島, 久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 31.08.2023
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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Summary:【背景】舌や口唇の機能低下は,食塊形成不全を生じ,摂取できる食事が限定され,低栄養につながるとされているが,その関連性について報告したものは少ない.本研究では,総合病院入院高齢者において,舌口唇運動機能の低下と低栄養,ならびに食形態レベルの低下との関連について調査を行った.【方法】対象は,総合病院歯科口腔外科に嚥下機能評価のために紹介され経口摂取をしており,舌口唇運動機能検査が可能であった65 歳以上の入院患者259 名(男性135 名,平均年齢84.4±8.0 歳)とした.Geriatric Nutritional Risk Index を用いて,栄養リスク高度群と中等度・軽度・群の2 群に分類した.また,食形態は嚥下機能評価および嚥下内視鏡検査の結果をもとに決定されており,ソフト食・ペースト食(JSDR2021 コード:3・2)群,常食・刻み食(JSDR2021 コード:4・3)群の2 群に分けた.舌口唇運動機能の群間差を比較し,ROC 曲線を用いて低栄養および食形態における基準値を算出した.【結果】259 名中158 名が栄養リスク高度群に分類され,その舌口唇運動機能(/pa/ 3.6 回/秒,/ta/ 3.6 回/秒,/ka/ 3.3 回/秒)は栄養リスク中等度・軽度・群(/pa/ 4.4 回/秒,/ta/ 4.2 回/秒,/ka/ 3.9 回/秒)と比べて有意に低かった.ROC曲線により/pa/ 4.7 回/秒,/ta/ 4.7 回/秒,/ka/ 4.3 回/秒をそれぞれ基準値とすると,感度/特異度(栄養リスク高度群)はそれぞれ75.3%/44.6%,77.8%/42.6%,74.7%/43.6%であった.一方,食形態では,142 名が常食もしくは刻み食を摂取していた.ソフト食・ペースト食群(/pa/ 3.5 回/秒,/ta/ 3.4 回/秒,/ka/ 3.1 回/秒)は,常食・刻み食群(/pa/ 4.3 回/秒,/ta/ 4.1 回/秒,/ka/ 3.9 回/秒)と比較して有意に舌口唇運動機能が低かった.ROC 曲線により,/pa/ 4.5 回/秒,/ta/ 4.7 回/秒,/ka/ 4.3 回/秒を基準値とすると,感度/ 特異度(ソフト食・ペースト食群)はそれぞれ76.9%/46.5%,81.2%/39.4%,79.5%/42.3% であった.【結論】総合病院入院高齢者における舌口唇運動機能検査の値が4 回/秒以下であれば,低栄養状態ならびに,食形態レベルの低下を検出する参考因子となり得ることが示唆された.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.27.2_117