上部尿路癌に対する開腹手術によるリンパ節郭清の成績とその意義

上部尿路癌におけるリンパ節郭清の治療的意義については,まだランダム化試験の結果もないことからガイドラインにおけるエビデンスレベルは高くない.ただ郭清による標準的治療を支持する報告は多く,最近もさらに散見されている.治療効果に影響する最も大きな因子は郭清範囲である.郭清範囲も標準化されていないとは言うものの,われわれが報告している郭清範囲はほぼ認知されているものと思われる.われわれの報告では解剖学的テンプレートに基づいた郭清を行う事が非常に重要であり,テンプレートによらない不完全な郭清ではほとんど治療的意義は認められない.郭清による治療効果を否定している報告もあるが,そのほとんどが多施設後向きの...

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Published inJapanese Journal of Endourology Vol. 30; no. 1; pp. 2 - 8
Main Author 近藤, 恒徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本泌尿器内視鏡学会 01.04.2017
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ISSN2186-1889
2187-4700
DOI10.11302/jsejje.30.2

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Summary:上部尿路癌におけるリンパ節郭清の治療的意義については,まだランダム化試験の結果もないことからガイドラインにおけるエビデンスレベルは高くない.ただ郭清による標準的治療を支持する報告は多く,最近もさらに散見されている.治療効果に影響する最も大きな因子は郭清範囲である.郭清範囲も標準化されていないとは言うものの,われわれが報告している郭清範囲はほぼ認知されているものと思われる.われわれの報告では解剖学的テンプレートに基づいた郭清を行う事が非常に重要であり,テンプレートによらない不完全な郭清ではほとんど治療的意義は認められない.郭清による治療効果を否定している報告もあるが,そのほとんどが多施設後向きの研究で,郭清範囲も明示されておらず摘出リンパ節も4-5個前後と少ない.これはこうした報告のリンパ節郭清が範囲的に不十分である事を示している.したがって郭清の第一目標は解剖学的テンプレートによる郭清を行う事である.これを達成するためにどのようなアプローチを選択するかであるが,これは術者の経験によって決定すればよいと考えている.腹腔鏡下リンパ節郭清の経験が豊富な術者による郭清の成績は優れており治療効果を上げることが可能である.しかしこれまでの報告の多くが開腹によるリンパ節郭清による成績である.またわれわれの施設のデータでは開腹郭清では術者による差が少ない.以上からわれわれの原則は,開腹手術で腎尿管全摘+膀胱カフ切除+リンパ節郭清を行う事としている.
ISSN:2186-1889
2187-4700
DOI:10.11302/jsejje.30.2